ハーメルン
DESIGNED LIFE
第6話 鷹は舞い降りた

 朝日を背景にして輝く北東の空に、天を引き裂かんばかりの轟音が響き渡る。
 鶴紗と梅は丘の斜面の途中で見つけた窪地に駆け込んでいた。その場で上を見上げると、空の青色に幾本もの白煙が奔っている。
 白煙の向かう先は、生き残りのディアマント型。四体全てが回避する間も無く爆発を起こして果てる。

「防衛軍のF-3戦闘爆撃機ですね。スモール級やミドル級ヒュージの掃討を目的に開発された純国産の高速爆撃機です」

 インカム越しに二水の解説を耳にした。
 しかし空の方を見ても、鶴紗には米粒が四つあるぐらいしか分からない。二水のレアスキル、鷹の目の力だろう。
 そう時間の経たない内に、米粒が飛行機の輪郭を露わにしてきた。尾から炎を噴き出し、羽ばたくことのない固定された銀翼で宙を行く。あっという間に鶴紗たちの頭上を過ぎ去ると、スモール級ファング種の群れに紡錘形の物体を投下した。
 着弾の瞬間を確認することなく、鶴紗と梅はうつぶせの状態で縮こまったように頭も下げる。
 質量を持った物体が重力落下によって奏でる風切り音。それが途絶えると同時に、先程の爆発とは比べ物にならない大音響が炸裂した。
 大気が震え、遠く離れた鶴紗にも衝撃と熱波に襲われているように錯覚させた。

「街から離れてるからって、無茶苦茶やるっ」

 鶴紗が頭を伏せたまま愚痴を零す。

「ヒュージ相手に、お上品にやってられないんだろう」

 すると同じく隣で伏せている梅がそう言った。
 ヒュージとの激戦は、あちこちに穴ぼこがあるこの丘を見ても一目瞭然。地形を変えてしまう程に戦闘が繰り返されてきたのだ。
 やがてほとぼりが冷めた後、鶴紗は立ち上がって窪地を出た。丘の麓を見渡して、その光景に一言呟く。

「そうは言っても、これはねえ……」

 四つの広大なクレーターが爆撃の威力を物語る。辺りにはヒュージの胴体やら脚やら頭やらのパーツが散らばっていた。元の灰色は真っ黒に焦げ付いており、原形を留めているものは少ない。
 ヒュージの墓場と化した真鶴の地。だがいつまでもこのままというわけではない。
 死してマギを失ったヒュージの体はせいぜい一晩で骨となる。骨の方も、数日あれば塵と消える。元より常識では測れない存在なのだ。

「皆さん、一度頂上に集合しましょう。ガーデンに帰るまでが外征。油断なさらぬように」

 司令塔の楓に通信で促され、クレーターを見つめていた鶴紗は踵を返すのだった。










 丘の頂に九人が揃ったところで、楓は早速次の指示を飛ばす。

「神琳さんと雨嘉さんでケイブの破壊に向かってください。空爆でヒュージは殲滅されたと思いますが、念のため一つずつ確実に」
「はい、承知しました」
「うん、分かった」

 二人は肯定して斜面を降りていく。目的のものは爆心地から更に奥へと進んだ場所にあった。あの大きさなら見逃しようがないだろう。
 ラージ級以上のヒュージを通常兵器で倒せないのと同じく、大型ケイブもまた爆撃では破壊できなかった。

「ミリアムさんは……」
「あ~、わしはまだ無理。動けんぞい」
「そのようですわねえ。仕方ありませんわ。梨璃さんと二水さん、ついてあげてくださいな」

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