ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り
閑話 相部屋の相手はいったい誰か
チーム加入の手続きを終えて、ゴールドシップは寮へと帰る。
ひとまず気持ちは落ち着いたし、整理もできた。
トレーナーは並ぶことは難しくても協力者にはなってくれると約束してくれた。
それで十分だ。最初は自分一人で全部やるつもりだったのだから、理解し助けてくれる人がいるだけですさまじく大きな前進である。
そう考えると気持ちはむしろ明るくなった。
気持ちの切り替えが早いのは、ゴールドシップのいい所である。
今後についてはまた明日考えよう。
今日は疲れたし、部屋の片づけを少しだけして、夕食を食べて、風呂に入って寝る。
そんな予定で寮の自分の部屋に戻ろうとしていた。
部屋に戻ると、部屋の中から音がする。
泥棒か、とも思ったが、基本寮内ではそういった事件は起こらない。外部犯は見つかればバ力が違うウマ娘にタコ殴りにされる。
内部犯の可能性も0ではないが人が多いここではリスクが高い。
そもそもカギはちゃんとかけていたはずだ。
もしかしたら、同室の相手だろうか。
未来ではゴールドシップの部屋はずっと一人部屋だったが、過去に戻った関係で、誰か同じ部屋になったのかもしれない。
誰だか知らないが、ここは一発ガツンとかましてやろう。
どちらが上か、はっきりさせるためにも、最初が肝心だった。
「ぐろぉああああ! 泥棒か? 泥棒だな! 神妙にお縄につけ!」
「えっ? むぐっ!?」
ゴールドシップはトビラを蹴り開けると、部屋の中にいたウマ娘に襲い掛かった。
最大速度でとびかかると、口を押さえて悲鳴を上げられなくしたうえで、ベッドに押し倒した。
左手で口を塞ぎ、右手で相手の両手を押さえつける。
体格差があるからか、バ力の差か、容易に押さえつけることができた。
「ん~!!!!」
「全く、ゴルシちゃんの部屋に相部屋しようなんて100万光年早い…… ってマックイーンなんだぜ?」
押さえつけて、ゴールドシップはその相手がメジロマックイーンだと気づいた。
涙目でムームー言いながら身をよじっている。
服装は薄緑色のワンピースである。
ネグリジェっぽくて、何かいけない感情に目覚めてしまいそうな、そんな光景だった。
制服とジャージを着まわして、私服なんてないゴルシちゃんに謝ってほしいぐらい女子力が高かった。
ひとまずウマっ気が抑えきれなくなってしてはいけない過ちをする前に、ゴールドシップは手を離した。
マックイーンは後ずさりすると、怯えた表情でゴールドシップを見た。
「ゴールドシップ、なんであなたがここに……?」
「いや、ここゴルシちゃんの部屋だし」
「あ、あなたと相部屋ですの……?」
「そんな顔して喜ばれると、ゴルシちゃん照れちゃうぜ」
「絶望してるんです!!」
てしん、てしんとベッドを尻尾でたたきながら、怒りをあらわにするマックイーン。
かわいすぎか。ゴールドシップは思った。
ほわほわした気持ちで愛でていると、不満なのかマックイーンは怒りをベッドをたたくことで表現し始めた。
ぽすん、ぽすん、てしん、と尻尾と平手でベッドをたたくマックイーン。
怒っています、というのを伝えたいのは伝わるのだが、実際に出てくる感想はかわいさだけだった。
マックイーンの周辺で、何かすべてをかわいくするやばい世界のバグでも起きているのではないか。ゴールドシップはそんな感想すら浮かんだ。
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