ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り
スピカ加入歓迎会
失踪事件翌日の放課後、スズカはスピカの部室を訪れようとしていた。
学園に戻ってきたスズカを待っていたのはトレーナー二人の謝罪だった。
二人の間のホウレンソウの欠如と、スピカはスズカを待っているといわれたことで、スズカの気持ちも少しだけ落ち着いた。
だが、チームスピカにすぐに行く気持ちにはならなかった。
単純に新しい人と会うのが怖かっただけである。
スズカは人見知りが激しい。
なんせ学園で雑談する相手はエアグルーヴ以外に多くない。クラスメイトとも話すことは多くなかった。
東条トレーナーとすら必要な会話以外あまりしなかった。
新しい人間関係を築くというのがスズカにはハードルが高かった。
おそらく誰も何もしなければ、一週間ぐらいはスズカはスピカの部室に来ず、エアグルーヴに引きずられて連れ出されることになっただろう。
そんな彼女が翌日にスピカの部室に来たのは、偏にスペシャルウィークに引きずられてきたからである。
「スズカさん、スピカの部室に行きましょう!」
スズカへの説明を横で聞いていて、さらに寮でも同室になったスペシャルウィークは、放課後当然のように高等部のスズカの教室に乗り込んできて、当然のようにスピカの部室へ同行した。
スペシャルウィークのコミュニケーション能力が高いわけではない。
同年代の人もウマ娘もいない環境で育ち、そもそも他人すら少ない北海道のへき地で育った彼女のコミュニケーション能力は実は非常に低い。
現に編入当日の挨拶では早口で誰にも聞き取れない挨拶をしたうえで転ぶという醜態をさらしている。
だが、人を疑わない人懐っこさと、迷ったら前に進む行動力、そして問題があっても根性があればどうにかなるという前向きさが彼女にはあった。
そうしてあれよあれよという間にスペシャルウィークに連れ出されたスズカは、しかし玄関前で不審者に囲まれた。
サングラスとマスクをした、不審者5人組である。
二人はビビった。
「サイレンススズカとスペシャルウィークだな」
「え、ええ、そうですが……」
「スカーレット、ウォッカ、マックイーン、やっておしまい!」
「おー!」
「おー!」
「なんでチームメンバーでないわたくしまで巻き込まれてますの!? あとタキオン先輩も仕事してください!」
「馬鹿野郎! タキオン博士はポキオン博士と異名をとるぐらい病弱なんだ! 箸より重いものを持たせちゃいけないんだぞ!」
「ゴールドシップ君、なんだいその不名誉な異名は。あとさすがにスプーンぐらいは持てる」
「名前を言ったら変装の意味ないですよね!?」
スペシャルウィークは思わずツッコミを入れた。
しかしそれが隙を生んだ。2人はズダ袋をかぶせられ、そのまま5人に担がれてスピカの部室へと連れていかれるのであった。
「それでは、サイレンススズカとスペシャルウィークの加入を祝して一曲『winning the soul』」
部室に連れていかれた二人は、そのまま椅子に座らされた後、ズダ袋を脱がされた。
目の前には料理が
向かい側にはスピカのメンバーが
隅にはトレーナーが、
逆の隅にはどうしていいかわからないマックイーンがいる。
スズカは困惑した。訳が分からなかった。
どうしていいかわからずに縮こまることしかできない。多くの視線が注がれて、泣きたくなった。
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