ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り
入学式と新しい出会い
ゴールドシップは気づいたらトレセン学園に居た。
いつも通っている、6年間通い続けた学園だ。
しかし、その風景は見慣れたものと少し違った。
校舎が全体的に新しい。
あのおんぼろだった校舎が、どことなく全体的にきれいだった。
一方で新校舎が無かったり、新しい建物がいくつか存在していない。
本当に過去に戻ったのか、そんな風に驚くゴールドシップの横を、赤絨毯が走っていく。
「なんだこれ?」
思わず声が出る。真っ赤な絨毯が校内の通路のど真ん中にいきなり出てきたらさすがのゴルシちゃんでも困惑する。
そうしてその赤絨毯の真ん中を歩いてきたのは、一人の葦毛の少女だった。
一目見て、それが誰だかわかった。
メジロマックイーン。自分の祖母だ、と。
なんせ顔が似ている。
体格は、自分の方がかなり大きい。
年齢差があるから顔も彼女の方が幼い。
だが鏡を見るようにそっくりだった。
静々と、しかし堂々とその赤絨毯の真ん中を歩いていくメジロマックイーン。
その美しい姿に、ゴールドシップは……
「マックイーン♪」
「きゃああああああ!?」
いたずら心を我慢できずに、彼女の目の前に飛び込むと過去最高の変顔をした。
トレセン学園非公式全校対抗にらめっこ大会6年連続優勝者ゴールドシップの渾身の変顔である。
いけ好かないトーセンジョーダンすらねじ伏せた渾身の変顔である。
それを見たマックイーンは化け物を見たかのような悲鳴を上げた。
悲鳴すらかわいいとか、うちのばあちゃんかわいすぎだろ、とゴールドシップは思った。
自分がこんなことされたら、きっと「ごるぁああああ」みたいな可愛くない威嚇しかできない。
「はっはー、マックイーン、にらめっこは笑ったら負けなんだぞ♪ 悲鳴を上げたからマックイーンの大負けだ」
「いきなりなんですの!?」
「なんだかんだと聞かれたら、答えてやるのが世の情け!」
「意味が分かりませんわ!!」
「ゴルシちゃんは、マックイーンに会いたくて、遠い未来から来た未来人なんだZO♪」
「日本語をしゃべってくださいまし!!」
ぷんすか怒るマックイーン。うちのばあちゃん、かわいすぎか。
ぷんすかって擬態語が見えるぐらいかわいい怒り方だ。
自分だったら大暴れして周囲を荒野のようにぶち壊す。ついでにトーセンジョーダンを蹴り飛ばす。
かわいさなんてかけらもない。恐怖と荒廃しかそこには残らない。
マックイーンと自分、どうしてこんなに差がついたのか。環境の違いか。
確かに雑草な自分とお嬢様なマックイーンは血はつながっていても環境が違い過ぎる。
すぐにゴールドシップは自己完結した。結論、うちのばあちゃんはとてもかわいい。
という事でもっと愛でることにした。
「という事で、マックイーンのおごりで食堂行こうぜ! スイーツ食べ放題だ!」
「スイーツ! ……って違いますわ!」
「という事でしゅっぱーつ」
「放してくださいまし!!」
まあそんな違いはどうでもよかった。
抱きしめて、頬をすりすりしながらマックイーンを連れて食堂へと向かう。
マックイーンは全力で抵抗し逃げようとするが、年齢差、体格差、経験差、身体能力差、どれをとっても自分の方が上だ。
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