ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り
これからのことと、チームのことと

ゴールドシップは決めた。
サイレンススズカと同じチームになる。
そしてサイレンススズカを愛でる。
悲劇を回避するため、とかいう理由ではない。
あの種族ワンコ娘スズカを愛でるために、同じチームに入る。
ゴールドシップは強く決意した。

サイレンススズカの所属はチームリギルである。
東条ハナトレーナー率いる、当代最強のチームだ。
ゴールドシップの居た世界線では、トウカイテイオーの事故後、チームを解散してしまい、その後行方が分からなくなってしまっていた。
しかしその管理能力には未来でも評価が高かった女傑である。
だが、ゴールドシップはリギルに入るつもりは毛頭なかった。
ゴールドシップは管理されるというのがトーセンジョーダン並みに嫌いなのだ。

実力的に入れる自信はある。ゴールドシップは、未来ではG1を6勝もしているのだ。
その実力は、あの最盛期のリギルのやばいメンバーと比べても遜色がないだろう自負がある。
だが入るという選択肢は取れなかった。
ならば一つ、自分に合うチームを見つけ出し、そこにスズカを移籍させる。
これしかなかった。

東条トレーナーが移籍に納得する相手で、かつ自分に合うチームを探す、というのは非常に大変そうだった。
まず、ゴールドシップにあうチーム、というのがほとんどなさそうだ。
未来では、管理をガチガチやるチーム、というのはあまり存在しなかった。
精神力の大小が、ウマ娘の能力に大きく影響するという理論がアグネスタキオン博士により確立し、主に精神的な理由からそういった方法は好まれなくなったためだ。
もちろん一から決めてもらうのが好きなウマ娘もいるので、管理や束縛が強いチームがまったくなかったわけではないが、大体のチームはのびのびとウマ娘を育てる方針だった。
だが、この時代のトレーナーは管理主義全盛期である。
その風潮は、東条トレーナーが管理主義を徹底して、実績を大きく伸ばしたからに他ならない。
だが、そんなチームにゴールドシップが入ったら最後、部室もトレーナーも全部蹴り壊すまで止まらない自信があった。
ひとまず東条トレーナーが移籍を認めそうなトレーナーを探すところから始めて、最悪そいつを調教して性格を変えるか、なんて物騒なことを考えていたゴールドシップだったが、すぐにいい相手が見つかった。
スピカのトレーナーだった。

チームスピカ
未来では聞いたことのない名前のチームだった。
おそらく記録をあされば出てきたのだろうが、このころのある程度メジャーなところは全部抑えていたゴールドシップが知らないぐらい無名なチームだ。
トレーナーの名前も聞いたことが無い。
おそらく歴史に埋もれてしまったチームなのだろう。
だが、トレーニングを見学していればすぐに、彼が非常に優秀なトレーナーだとわかった。

まずウマ娘を見る目がある。
選んでいるウマ娘はどれもこれも、才能があって、しかし我が強く癖がありそうな子ばかりだ。
自分もそうだが、ああいう癖があって自分がやりたいことしかやりたくないタイプのウマ娘は、ガチガチに管理しても心が弱り、弱くなってしまう。
放任主義的な指導方法に合った、それでいて才能があるウマ娘を見抜く、その目は確かなのだろう。
もう一つ、ウマ娘の不調をすぐ見つけるという点でも、見る目があった。

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