EX 完全犯罪グラスホッパー、飛行石紛失事件
・完全犯罪グラスホッパー
その日米花町で見つかった死体は、舌が切り取られて無くなっていた。
死体が発見されたのは〇月〇日の午後2時ごろ。
いつまで経っても連絡のつかないのを心配して訪ねてきた被害者知人が発見したらしい。
被害者は42歳無職。
怪しげな繋がりを持っていたらしく、定職を持たない割に金遣いの荒い生活を送っていた。
被害者は鋭利な刃物で喉の奥から脳髄を突き刺され即死だった。
被害者の住むアパートの一室は鍵がかけられたまま。窓も閉まっていて密室だ。
凶器は部屋に元々あったペーパーナイフだが、指紋等は残されていない。
アパートの監視カメラに不審は人物は映っていなかった。もっと言えば死亡推定時刻前後に出入りした人間は1人もいなかった。
被害者は素行に問題があり、借金も多ければトラブルも多い。
したがって恨みも多方向から買っていて容疑者候補は数多いが、何故か容疑者全員に確かなアリバイが残されていた。
真昼の犯行。
部屋で寛いでいた被害者は傷跡から推測するに、正面から加害者と向き合っていたはずだ。
それなら通常、ある程度親しい関係にある人物が加害者となる。
真正面なら向き合って抵抗されず隙をつくのは他人には難しい。
被害者に友人として家に招かれ、向き合ったまま気を緩めたところを一突き。そう考えるのが常道だ。
しかし、現場に残された痕跡はどれも部屋に被害者が1人きりしかいなかったことを示している。
机に乗ったコップはひとつ。洗濯物は室内に干しっぱなし。
被害者と親しい友人によると、被害者は少なくとも友人を家に招く際は部屋を掃除する人物だったと証言している。
散らかった室内には他人の毛髪一つも見つからず、その家に居たのは被害者1人だけと言わざるを得ない。
警察は自殺を1度は疑った。部屋には争った痕跡がなかったからだ。
しかし、自殺と言うには被害者の死後切り取って持ち去られた舌がそれを否定する。
少なくとも、死体から舌を切り取って持ち去った人物が存在しなくてはならない。
それなのに、現場には被害者以外の存在の痕跡がまるで存在しない。
拭い去ったかのように完璧な現場。
掃除が行き届かず僅かに埃が積もる部屋には、被害者以外が歩いた跡すらなかった。
下校途中、コナンはポアロで読書するグラスホッパーを見つけた。
いつもと同じ時間、いつもと同じ場所、いつもと同じアイスココアを飲みながら、彼女は窓際の席から通りを眺めている。
コナンは店内に入り、笑顔で出迎えた梓にぺこりと頭をさげた。
そのままグラスホッパーの隣に座り、アイスコーヒーを注文する。
「三日前、東山剛さんが死体で見つかった」
お互いに通りを眺めたまま、ポツリと呟くように話し始める。
「東山さんは組織の一員だった。末端も末端だけど、悪知恵は働いたみたいだな。組織の金を上手いこと横領して豪遊していて、ついに組織から目をつけられた」
夕方の通りは車も多く、暮れゆく夕日がサイドミラーに反射する。
「暗殺者を差し向けられたのは見せしめのため。お零れをあずかる人もいたみたいだし、組織としても引き締めどころだったのかも。それにしても暗殺者の技能に見合わな過ぎる小物だったけどな」
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