11.閑話~伏黒恵~
東京の呪術高専襲撃事件。
物理的被害として、規模が一番大きかったのは建物への被害ではなく…五条悟の「虚式 茈」による地形への大ダメージだ。業者を呼んで元通りにするにしても、長い工期と莫大な予算が必要となる。しかも、元通りにしたところでメリットなど何もない。
建造物への被害総額は、表向きは宗教系の学校である呪術高専が払える額ではない。純和風の木造建築物。歴史的建造物にも登録されておかしくないレベルがボロボロになっていた。この手の建造物は、直せる人も限られており人件費が時価の職人達だ。
つまり、この負担は地方自治体や国家……言い換えれば税金で賄われる。
当然、呪霊側が悪いという意見もある。だが、なんで全校生徒合わせても2桁ちょっと居るか居ないかの学校にコレほどまでの助成金を出さないといけないのか、説明に困る国のお役人達は胃痛に悩まされている。
「えぇ~、次に人的被害ですが~」
伊地知潔高は、纏められた人的被害の報告を行った。人材不足が悩まされる呪術師達が大量に殺されるなど、今後の仕事の割り当てに困る……と言うのが少し前までの事情であった。
だが、昨今、4級以下の低級呪霊の除霊に関しては既に呪術師に仕事が来る事はほぼ無くなった。「呪霊GO」というアプリのお陰で良くない呪霊達がドンドン数を減らしていた。
おかげで、今や二束三文の価格で仕事をする呪術師、呪詛師達があぶれている。なにより、呪術業界で暗黙の了解となっていた、自作自演の除霊のお仕事も「呪霊GO」のお陰で簡単にはできなくなった。低級呪術霊など見えてしまえば簡単に払えるからだ。
最悪、人的被害までなら何とか許容出来た楽巌寺嘉伸。だが、呪術界の重鎮として、特級呪物の紛失まであったとなっては、沽券に関わる。よって、生徒達から聞いた大事な情報を審議の場にぶちまける。
「此度の被害は確かに甚大だ。だが、儂の元に、伏黒恵が呪霊と通じているのではないかと情報が入ってきている。捕まえた呪詛師同様に情報を吐かせるべきだろう」
「恵がぁ?ないない……でも、僕のそんな発言だけだと納得しないよね。いいよ、尋問でもなんでもやってくれて。だけど、恵には嘘偽りを言わない縛りを設ける。我々は、呪霊と通じていないと分かれば、それ以上疑わないという縛りを設ける。これでどうかな」
楽巌寺嘉伸は、勝利を確信していた。生徒達から集めた情報だけでも、どう考えても内通者であると確信が出来る事ばかりだったからだ。
□□□
尋問室の伏黒恵の前に、熱々のカツ丼が置かれていた。胃に優しくない料理である事は間違いない。
そして、対面には本日の尋問官である禪院真希が笑顔で座っている。彼女秘蔵の特級呪具游雲が呪霊側の手に落ちた事で帰らぬ物となった。その責任が、伏黒恵にないのは分かっている彼女ではあるが……流石に、末端価格5億超えの品物がなくなったのだ。理解できても感情が許さなかった。
楽巌寺嘉伸より、伏黒恵に全てを吐かせれば……学校の催し物での事故という事で、補填すると確約を貰えていた。つまり、彼女は何が何でも伏黒恵の口を割らせる覚悟があった。
ちなみに、弁償は税金での補塡だ。
「伏黒、お互いの為にも正直になろうな。良いか、私の質問に嘘偽りなく確実に答えろ。沈黙したら、話したくなるまでボコるからな。いいか、こっちは游雲の代わりを手に入れるためにも手加減はしねーーぞ」
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