二木市の魔法少女との駆け引き
彼の前に立っているのは角の生えた魔法少女だ。
その顔にはどこか翳りが見えた。
彼女は何かに苦しめられているのだろうが、それが何かはわからない。
「・・・俺は神浜の魔法少女の指導者的地位にいる奴と敵対している。
向こうは俺のことを知らんだろうが。そいつの名前は和泉十七夜だ」
あえて、敵を特定したような言い方をした。
これなら、かこと協力していることがバレても問題はない。
指導者と敵対しているのであって、普通の魔法少女とは敵対していない。
そう言い訳することで煙に巻くことができるからだ。
学生紛争もこういった内ゲバ的外交が展開されたものだ。
「・・・敵の敵は味方、と言いたいのかしら?」
「どうぞお好きなように受け取ってくれ」
すると、彼女は指を鳴らした。
その瞬間、中世の軍服姿の魔法少女がレイピアで斬りかかってきた。
とっさに刀を抜いた。いや、抜かされたというべきか。
この刀は使用者の体を都合よく操ってくれるらしい。
レイピアと刀がぶつかり、火花を散らした。
「・・・なかなかいい刀っすね」
少女は今の動作が鉄雄の意思によるものでないと見抜いた。
まったくその通りだと鉄雄も思った。
朗生の言う通り、自分はこれからもこの刀に命を救われるのだろう。
「そこまでよ、ひかる・・・試させてもらったわ、ネジレ探偵さん」
「・・・どうして知ってる?」
「あら、確証はなかったのよ?」
鉄雄はしまったと思った。この少女はカマをかけたのだ。
「でも、神浜ではずいぶんと噂になってるわ。
正体不明の魔法少女と、よくわからない少女と、
それを率いる謎の刀剣男子ってね。
探偵さんということは、真実を突き止めにここに来たのかしら?」
「探偵ってのは誰かが勝手につけた渾名だよ。
十七夜とかいう奴からすると、犯人役かもな」
「じゃあ、何かやらかそうとしてるっすか?」
彼はLobotomyのロゴと理念を指さした。
「親友の遺志を継ぐというやらかしさ。
本来、世界は七日間の光に包まれるはずだった。
ところがどっこい、十七夜とみたまとかいう奴の裏切りでパーになった。
その結果が、お前たちの故郷の壊滅だろ?」
鉄雄は彼女たちが二木市の出身だと直感的にわかったのだ。
そこは前世の故郷だったから、何となく同郷者がわかるのだ。
「・・・どこまで知っているのかは聞かないわ」
「端的に言えば、他はほとんど知らないさ。
お前たちが神浜の魔法少女を憎む理由ってのも。
だが、俺はその中の二人に一発かましてやりたいし、
お前たちは全体にかましてやりたいんだろ?
だったら、俺たちは目的がだいたい同じだろ?
安心してほしいが、ネジレ探偵の一人である魔法少女は市外の魔法少女だ」
すると、彼女は金棒をこちらに向けた。
「悪いけど、転生者は信用できないのよ」
「・・・確かに俺も転生者だけど、一回目の人生はこの世界で、
二回目のこの人生だってこの世界なんだぞ?
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