3,メイクデビュー
ゴールドシップと共に学園に戻って次の日。俺はレース場にいた。
「ふぃー……今日はいい天気だな! アタシの中の葉緑素が歓喜してるのがわかるぜ!」
彼女と共に。
朝起きて身支度を整え、トレセン学園に来たと思ったら、ゴールドシップが突撃してきてそのまま誘拐。昨日もこんなことあったなーと思っていたら、着いた先はレース場だったということだ。
何が起きたかわからないと思うが、俺も何が起きたかわからない……。
「おいおい大丈夫か? 今日はゴルシちゃんのデビュー戦だぞ?」
そうなのだ。ゴールドシップは今日がデビュー戦。トレーナーがいないとレースに出られないはずだが、昨日まで騙しに騙して登録にこぎ着けていたのだ。というか、そもそもトゥインクルシリーズへの挑戦は5人以上メンバーがいるチームに所属していないといけないはずだが……。
色々ごまかしてはきたものの、さすがにデビュー戦はトレーナーが本当にいないと出場できない。だからこそ、やる気はないが何度も模擬レースに出てトレーナーを探していたらしいのだが、ピンとくるトレーナーがいなかったらしい。
そこで、この前たまたま俺が来た。その時こいつだ! となったようだ。
「岩場でカニ見つける時にあるだろ、ここだって感覚。あん時そんな感じだったんだよ」
直感で決められたわけだ。とりあえず、今日のレースではトレーナー役として登録してもらうことになった。
書類にサインしているとき、チーム名が記載されていた。チーム、ゴルシ……よくこれでごまかせたな。呆れ顔で書類を提出し、確認を待った。
なんとか手続きを終えて控室に入ると、ゴールドシップがしょうゆせんべいにお茶をかけていた。
何をしてるんだ……?
「せんべいにお茶かけたらぬれせんべいにならねーかなと思ったんだけど、全然なんねーのな」
……すごいリラックスしている。大丈夫なんだろうか。
先輩トレーナーの見学で控室に入らせてもらった時は、ウマ娘が集中して気持ちを整えていたのを覚えている。今のゴールドシップのように、せんべいにお茶をかけることに集中するなんて言語道断だ。
しかし、この娘なら……破天荒に何かやってくれるんじゃないかという期待をしてしまう。
たった1度、しかも模擬レース。そんなレースを見ただけで、俺は魅了されてしまったんだから。
「お、そろそろか! じゃあな、トレーナー! アタシのレース見ておけよな!」
時間になり、ゴールドシップは元気よく控室から飛び出していった。
大事なデビュー戦ではあるが……どうなってしまうのだろうか。
デビュー戦ということで、観客の数は他のレースよりも少ない。しかし、熱心なウマ娘やトゥインクル・シリーズのファンたちは、新たなスター誕生に立ち会いたいと集まるし、メディア関係者も新たなスターを発掘せんと何社か集まっている。俺は新人だからそういう伝手が無いから誰がどこの人かはわからないが。
ゴール前の1番いい場所をとり、そこでレース開始を待つ。一体どんな走りを見せてくれるのか、楽しみだ。
――そして、レースはスタートした。
『各ウマ娘、、そろってキレイにスタートしました!』
スタートは出遅れもなく、いっせいにスタートした。模擬レースで出遅れたのは集中していなかったからなのだろうか。
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