05/25 クラス合同訓練
08
1203/05/25(月) 放課後
「はい、これが今月の課外活動の詳細ね」
自由行動日も終わったしそろそろかなと思っていたら、すこし遅い日付でミーティングルームに呼ばれ、いつもの面子でサラ教官の楽しそうな表情を眺めることになった。何かあったんだろうか。まぁいいか。
とりあえず渡されたレジュメに目を通すと、今度は打って変わって西のラマール州にあるグレンヴィル市。リーヴスとミルサンテのちょうど真ん中にある街だ。南にトリシュ川をいただく田園風景が綺麗で、ミルサンテのガラ湖と並んでちょっとした観光資源になっているそれなりに大きい街のはず。
「往復はしやすいけど、向こうの市長さんが話したいことがあるみたいで今回も前日から出発を予定しているわ」
それじゃあね~、とまた説明もそぞろにサラ教官はミーティングルームを去っていく。こういう事態になるだろうと思って予め持ってきていた帝都全土の地図を机に広げ、全員でそれを見下ろした。
「今回は鉄道沿線の街かぁ」
「大陸横断鉄道本線で、帝都乗り換えでラマール行きに乗って総二時間ぐらい?」
「乗り換え含めてもそんくらいなのか」
放課後すぐに出たら18時頃には到着出来るだろうか。まぁラント到着と似たような感じだけれど、街道を歩いての二時間と鉄道乗り継ぎでの二時間はワケが違う。
「……これ鉄道のチケットも手配自分たち?」
基本の疑問を呟くと、全員一律で若干不安があるような顔をしてしまい、そういった事務的なことにおいてはサラ教官への信用がないというのがありありとわかる。
「さすがにお金は学校から出る……とおもう、けど……、うん」
「サラ教官よりマカロフ教官に聞いた方が良さげだね」
「なんだ、じゃあジョルジュが聞くのが早いじゃないか。兄弟子なんだろう?」
「そうなのか?」
「……まぁあの人からの無茶なオーダーに付き合わされてた同士ではあるかな」
この一ヶ月半でその温厚さがようくわかったあのジョルジュが、うんざりしたような表情を見せるというのは大層珍しいのではなかろうか。G・シュミット博士、三高弟の一人であり今でも精力的に活動されている高名な研究者の方で、ゼムリア大陸で最も有名な人に数えられる。導力革命辺りの話は日曜学校でもやっていたし、たぶん。……まぁ日曜学校が普及していない地域もあるのであまり言うとあれかもしれないけれど。
「なら確認するのは、チケット、風土、周辺地域の魔獣、出来れば地図、の四つかなぁ」
「じゃあトワ以外で巻き取ればいっか。私が風土やるし」
「そうだね。じゃあ僕はチケットについて」
「ならオレは地図」
「一番簡単なのを持って行ったなクロウ。まぁいい、魔獣を調べるさ」
流れるように、まるで打ち合わせでもしていたかのような速さで各々分担を決めていく。トワだけが、えっえっえっ、と狼狽えているのだけれど、まぁたぶんみんな考えていることが似ているってことなんだろう。
「生徒会、忙しいんだろ?」
ぽん、と頭で弾ませるようにクロウがトワの頭を撫でる。そう。トワは本当に忙しくなっているのだ。生来の気質に加えて、生徒会故に見えるもの、生徒会故にやらなければならないもの、権利があるからこそ出来るもの、そういったものが見えてしまい、そして見えたものを放っては置けない。それで最近帰りが遅いというのはもう全員承知している。
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