5.楽しくありませんか?
メジロマックイーンと麻真が夜のトレセン学園を歩いていた。
生徒会でシンボリルドルフ達との夕食を終えて、メジロマックイーンと麻真は生徒寮へと向かっていた。
本来なら麻真は生徒寮ではなくトレーナー寮へと向かうはずだった。メジロマックイーンが寝泊りする生徒寮に対して、麻真が帰るべきトレーナー寮はトレセン学園の校舎を中心に反対の位置に建てられている。
しかし麻真は夜の遅い時間だと言い出し、メジロマックイーンを生徒寮まで送っていた。
要らぬ気遣いとメジロマックイーンも麻真の提案を断っていたが、麻真は「良いから送らせろ」と言って強引に彼女の横を歩いていた。
「「はぁ……」」
麻真とメジロマックイーンの二人で肩を並べて歩く。二人は溜息を吐くと、揃って疲れ果てた顔を見せていた。
「なんとか誤魔化せましたわね……」
「アイツら、本当にしつこかったわ……」
そう言って、二人が安堵の声を漏らす。
シンボリルドルフとエアグルーヴの質問攻めをどうにか二人は切り抜けていた。
メジロマックイーンの抱える問題を解決する話が済んだ後、シンボリルドルフとエアグルーヴからメジロマックイーンに唐突に切り出された話題から場の空気が変わっていた。
メジロマックイーンは、どんな方法で麻真をトレーナーにしたか?
この質問が全ての原因だった。
メジロマックイーンは咄嗟に麻真を譲ってくれと言い寄ってくる高等部の生徒へ答えている『麻真がトレーナーになったのは、学園から一方的に告げられた』という話をしたのが運の尽きだった。
シンボリルドルフとエアグルーヴは、それを嘘だと見抜いていた。
トレセン学園から一般生徒に対してトレーナーの指定が来ることは、特別なことがない限りありえない話だった。
基本的に生徒はトレーナーからのスカウトで互いに“契約”を交わす。これを経て、トレーナーはURAにウマ娘を自分の専属ウマ娘として新規登録を行う。
もし仮にその“特別”が起こるなら、その手の話は生徒会にも通達が来る。しかし生徒会に事前に話が行かず、いつの間にか麻真がメジロマックイーンのトレーナーになっていたことにシンボリルドルフ達は疑問を持っていたらしい。
本来の過程を通らずに、麻真がメジロマックイーンのトレーナーとしてURAに新規登録が既に行われている。このことに生徒会は疑問を抱いていた。
それもそのはず、麻真の場合はその過程をトレセン学園の理事長である秋月やよいが強引に全ての処理を終わらせていたのだ。
故に、トレセン学園からトレーナーの指定を一般生徒が受け、それを生徒会まで話が通り、そしてトレーナーと一般生徒がURAに登録されるという“本来の過程”が行われていない。これをシンボリルドルフ達は気づいていた。
だからこそ、メジロマックイーンにシンボリルドルフ達は問い質した。どうやって麻真をトレーナーにしたのかと。
本当のことを話そうとメジロマックイーンも一瞬だけ悩んだ。しかし彼女は、この二人にはそれだけはしない方が良いと咄嗟に判断していた。
だが実際のところ、メジロマックイーンが最初に話していたことは、半分は本当のことであった。
理事長の秋月やよいから有能なトレーナーがいると言われ、そしてメジロマックイーンは麻真と出会った。その後、本人もよく分からないが麻真がトレセン学園に突然来るなり、彼が自分のトレーナーになったと告げられただけなのだ。
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