資格のないトレーナー
「いや、本当にはいっていいのか?」
「いいのよ。関係者なら許可してもらえるわ」
「・・・そんな無茶苦茶な」
俺はきょろきょろしながら学園の校門をくぐる。
完全に不審者だ。
話は少し前。就職活動に相変わらず失敗した俺が商店街を通りがかるとキングヘイローとハルウララに出くわした。
話を聞けば以前の広報活動の手伝いのお礼にキングヘイローがハルウララの売り子の手伝いをしているとのことだった。
その後「手伝って欲しいのだけれど」というキングヘイローの言葉でここに連れてこられた。
「なんで俺はこんなところに連れてこられてるんですかね・・・」
俺は見慣れない建物の中を見渡す。
どうやら使われていないトレーナー室らしいというのが置かれた書類からわかる。
「あなたにこのキングのトレーニング計画を立案する権利を上げるわ!喜びなさい」
そしてオーッホッホッとキングヘイローは高笑いを上げる。
「はぁ・・・いやホントにトレーナーつけたほうがいいぞ。ここには優秀な人が多くいるんだから」
俺のような出来損ないにかかわるのは優秀な彼女にとって無駄にしかならないだろう。
「嫌よ・・・私を見てくれないもの」
キングヘイローは小さくつぶやく。
「え?なんか言ったか」
「なんでもないわ!それより早くしなさい」
そういってキングヘイローは紙の束を押し付けてくる。
「いやいや、だいたいどうするつもりなんだ?短距離でいくのか、それともマイルを目指すのか?」
「ふふふ。聞いて驚きなさい!両方よ!」
むふーと鼻息荒くキングヘイローが答える。
「全部よ!キングたるものすべてのレースを制覇しなくてはいけないわ!」
キングヘイローの高笑いを見て俺は首を振る。
「それは時間がかかるだろ・・・なら3年間は短距離で結果を出しつつマイル適性を伸ばす方向で。
3年後はアルクオーツスプリントを目指すか。ダイアモンドジュビリーステークスもいいんだけど」
「アルク・・・そんなレースあったかしら」
キングヘイローは首をかしげる。
「・・・UAEメイダンって知ってる?」
「どこよそれ」
「・・・ウララさんたちにドバイゴールデンシャヒーンを目指すように言ってるんだけど聞いてない?」
ようやく気付いたようにキングヘイローは目を見開く。
「それって海外!?冗談じゃないの?」
「冗談じゃないよ。二人にはその能力がある」
少なくとも今のハルウララの成長率なら3年後は十分行ける。
短距離のダートなんてハルウララに用意されているとしか考えられないコースだ。
日本にはこのカテゴリーのG1競走が全く存在しないのでハルウララは将来海外で活躍することになるだろう。
賞金のドル建てはレートを考えて両替をとか言ったら
ハルウララとトレーナー君の二人は冗談だと思って笑っていたが。
日本よりアメリカではダートが主なのでいずれ海外が活躍の場になるだろう。
「え?海外・・・」
「いや短距離やダートは日本じゃ人気あまりないから・・・海外で結果だしてハリウッドでたほうがいいでしょ」
「はいうっど!?そ、そうよね私ならそれくらいじゃなきゃね!」
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