ハーメルン
バカと無情の試召戦争 ~番外編という名の復習ノート~
恋文騒動

 今日はいい天気ね……。鳥の囀りが聞こえる。家の庭には、お母さんの趣味で植えてある花々が綺麗に咲いていた。窓の外に視線を移せば、広がるのは当然青い空。白い雲は流れ、太陽が眩しく照りつけている。
 試召戦争の喧騒から解き放たれて三日。それまでは他のクラスを幾度となく振り回す日々を過ごしてきたけど、そんな日々とももうオサラバ。ようやく私……根民円(ねたみまどか)にも平穏がやってきた。
 さて、今日はどう学園生活を過ごそうか……。まあ、私のような劣等生は勉強を頑張りつつ、平凡な学園生活を…………。

西村「坂本。」

雄二「………………明久がラブレターを貰ったようだ。」


「「「殺せぇぇっ!!」」」


 ……どうやら、平凡な学園生活を送れるのは、まだ先のことらしい……。


・・・


 クソ代表の爆弾発言によって、教室は地獄絵図と化していた。というか、クソ代表の声って結構小声だったわよね?……アンタら、どんな聴覚してんのよ。

「どういうことだ!?吉井がそんな物を貰うなんて!」

「それなら俺たちだって貰っていてもおかしくないはずだ!自分の席の近くを探してみろ!」

 いや、吉井君が貰っているから自分も……なんて、あるわけないでしょ。アンタ達と吉井君じゃ、全然違うんだから。

「ダメだ!腐りかけのパンと食べかけのパンしかない!」

 さっさと捨てろ。不衛生にも程があるわ。

「もっとよく探せ!」

「……出てきた!未開封のパンだ!……賞味期限切れの。」

「お前は何を探してるんだ……。」

 本当その通りである。

 その後は西村(鉄人)先生の一喝で、出席確認がスムーズに行なわれた。……クソ野郎共の返答が『吉井コロス』であることを除いて。

西村「……よし。遅刻欠席者はいないな。今日も一日勉学に励むように。」

明久「待って先生!行かないで!可愛い生徒を見殺しにしないで!」

 吉井君も流石に、普段は恐怖の対象でしかない鉄人先生に助けを求めるしかないようだ。確かに、あんな堂々と殺害予告を大人数から受けて、平然としていられる人間はいないわね。

西村「吉井、間違えるな。」

 扉に手をかけたまま、鉄人先生は吉井君にそう告げた。でも、『間違えるな』って、ここまでのやり取りで何か勘違いを起こす要素があったかしら?

西村「お前は不細工だ。」

 そこ?仮に事実でも、本人を前にして『不細工』なんて言うのは、教師としてどうなのかしら?

西村「授業は真面目に受けるように。」

明久「先生待って!せんせーい!」

 吉井君の叫びも空しく、鉄人先生は教室を去っていった。
 ……もしかして、鉄人先生もクソ野郎サイドについているのかしら?吉井君が観察処分者になる前日、鉄人先生の私物が転売されたって話は聞いたけど、数ヵ月も前の話を未だに根に持ってるのかしら?

 その後はクソ女……失礼、島田美波に指の骨を折られそうになったり、姫路瑞希にも暴力を振るわれそうになったり、とても吉井君が手紙を読める状況ではなかった。

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