はろーわーるど
無限の可能性を提供すると謳うinfinite dendrogramが販売されて一週間。
販売日翌日のルイス・キャロルと名乗る開発責任者による世間を震わせる発表から五日後になって漸く仕事の区切りがついたことでデンドロを始めることができるようになった。
「この日が来るまで長かった・・・」
待望の時間を前に幾多もの感情が複雑にブレンドされた言葉を呟く。
本当に長かった。5日間の間会社で寝泊まりして仕事していたからゲームは購入済みでもスタートダッシュをキメる事も出来ず始まった地獄のデスマーチ。その代わり上から休みをもぎ取って来てはいるのだが。
俺はinfinite dendrogramがホットな話題となって世間様を賑やかしている間ゲームが生き甲斐と豪語する同僚♂と揃って死んだ目で労働に励んでいた。
デンドロの仕様の三倍時間と合わさって24h×5th×3=で360時間幽閉された気分だ。せめて隣にいたのが私生活がだらしなくて隙だらけの綺麗なOLとかだったら少なくとも得した気分になっただろうに。非常に残念でならない。
何故お前は女じゃ無いんだ。(理不尽)
デンドロの魅力を前に会社員の自制と保身もあってサボタージュすることもできない葛藤は筆舌に尽くし難い。そして風呂にも入っていない男臭は普通なら悶絶ものなのだが悲しい事に五日間で慣れてしまった。身も心も汚れちまった悲しみ・・・
なにはともあれ今じゃゲーム機体が何処も売り切れか高額転売されてるから奇跡的に寝泊まり開始前に購入できたのはきっと不幸中の幸いだったのだろう。
身の回りのことを済ませたら早速デンドロにログインする。デンドロに緊急時アラートがついているとはいえ家が燃えてたら世話がないからな。
事前に掲示板を覗いて調べたところチュートリアルの管理AIはそれぞれ違うことがあるらしい。最も多いのはチェシャ猫の管理AIらしいが。自分の場合誰になるのだろうか。
どうせなら綺麗なオネーサン方が良い。今のところ3人ほど女性型AIが報告されているらしい(重要)。素晴らしい。100点だ。
なおうち1人?は幼い双子だとか。需要か。需要なのか。
ウォオオオオ!!!ネーサン!オネーサン!オネーサンオネーサンオネーサンオネーサン綺麗なオネーサンAIきてくれェエエエエ!!
神に祈る様に、期待を胸にそっと固く閉じていた目を開けていく。
どうやら周囲は研究所のようだ。SFチックな所を見ると部屋の主は知性的、あるいは意外にも活発な人物であってもおかしくはない。いいぞ。悪くないスタートだ。あとは管理AIを確認するだけ・・・
目を開けると そこには女性的
というには無理がある男性体型の複数の生物の特徴を持った眼鏡掛けたキメラっぽいのがいた。
何でだよ(血涙)
向こうが俺を認識したことを確認した後に一拍置き、柔かな笑顔を意識して俺は言った。
「チェンジお願いします。」
・・・・・・・
チェンジは認められなかった。畜生!俺がなにをしたっていうんだ・・・ただ、俺は男に接待されても嬉しく無い旨を懇切丁寧に説明しただけなのに・・・・
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