桃源郷の誓い
【龍都性嵐の乱】が収束して内部時間にして2日後、俺はようやくログインできるようになった。
デンドロはデスペナを食らうと24時間ログイン出来なくなってしまう。
仕様によってこれ程惜しい事をした事は無い。桃源郷が合法的に堪能できたというのに。
俺はダンッと机に両手を叩きつけた。
俺の目の前には頬を赤く染めて息を荒げる色っぽい元男性のスクリーンショットの数々と、とあるマスターの「桃源郷」発言がパソコンの開かれていた掲示板に表示されていた。
俺の判断ミスだ・・・!俺が息子を意固地になって守ろうとしてさえいなければ・・・!
いや、過ぎた事を後悔しても何も起きる事はない。大事なのは次に生かす事!
そして元を辿ればブラックリストランクイン勢の情報収集に力を入れる事が無かった事が原因だった。
奴が性転換に熱をあげる有能な変態だった事さえ知っていれば俺はきっと静観していた。
「これは俺にとって不都合たり得ない」と。
俺は、顔と体さえ綺麗なチャンネーで有れば元男性でも構わなかった。
寧ろ元男性の混乱するシチュに興奮していたかも知れない。
・・・・・
◇〈DIN〉黄河帝国支部
俺はログインするなり新聞社であり情報機関である〈DIN〉にいた。
「ブロマイドはあるか?」
〈DIN〉に所属する気怠げな男性の受付にそう尋ねる。俺は普段は女性の方に並んでる。
「アレか?何枚だ?」
「Lを全部一枚ずつ。」
「・・・了解。三万リルになる。領収書はいるか?」
いや、大丈夫だ。
ちなみにLはレディのLの事だ。他にもP、G、Sがある・・・。
ホクホク顔で〈DIN〉から出た俺は〈DIN〉のそばにいた男性マスターと目が合った。
ピィンと来たね。こいつは・・・。
お互いの距離を確かめるようにザッザッと歩いていく。腕を伸ばせば届く位置まで近づいた・・・!PVPの殺傷圏内だ!
俺たちはガッと手を出して握り締めた。固く結ばれた漢同士の握手が黄河の朝日に照らされていた・・・!
【ルン・バ・ンルにフレンドが1人増えました!】
・・・・・
「主様よ。おんしの趣味に口を出す気は無いのだが・・・」
珍しくカーソンが言いにくそうに言葉を選んでいるようだ。口をモゴモゴさせている。
「俺たちは一心同体の関係だろうが。言ってみろよ。」
カーソンは俺の相棒だ。何があろうときっと変わらない。
覚悟を決めたカーソンがキリッとした。
俺は精悍な不退転の覚悟を決めたカーソンにドキッとした。トゥンクと心臓が温かく跳ねる音がした。これが恋・・・?
「主様は・・・男同士が好きなのかの?」
宇宙が見えた猫のような顔で俺は硬直した。胸のポケットからカサっと音がした。俺の胸元にはLプロマイドがある。そうだ。俺は綺麗なオネーサンが好きなんだ。
神妙な顔で問いかける。俺は、カーソンに何があったのか知らねばなるまい。
「どうして・・・そう思った・・・?」
「だって、主様のフレンドリストは男ばっかりじゃし・・・プロマイドだって元男性じゃろ?」
晴天の霹靂だった。確かに俺のフレンドリストは男ばかりだ。俺はホモなの・・・?
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