酒の魔力。一夜の魔法。
黄河の首都に降り立った俺は中華に類似した光景に圧倒された。
〈NEXT WORLD〉といった次の世界を謳ったVRは今まで存在したもののこれ程のクオリティが高いゲームは絶対に無かっただろう。
ティアンと呼ばれるNon playable character、NPCや従魔師?みたいなテイマー職らしき男が引き連れたモンスターの細かな動作の生き物らしさは再現にどれだけの工程が必要なのだろうか。ましてや世界規模などと。
まぁその道の人じゃ無いから突っ込んだって何も分からんのだが。
じっと人混みを見て目をつけた男性に自然に近寄っていく。
「・・・オススメの場所はあるか?」
声は自然と小さく、聞こえる程度の密談向けの仕様になった。指で輪を作る。
「・・・最近来たっていう噂のマスターか?なんだ。知りテェのか?」
俺はそっと初期金額のうちから硬い何かを男の手に握らせた。金では無い・・・これはゲームだから。たとえ金だとしてもデータの塊に過ぎない・・・だから賄賂では無いのだ。
ニヤリと口元を歪めた男は手振りでついて来いとジェスチャーをした。
good Communication!
俺達は連れ添って人混みの中に紛れて行った・・・。
【クエスト【鉄火場の火花――黄河の秘密の賭博 難易度:三】が発生しました】
【クエスト詳細はクエスト画面をご確認ください】
【ルン・バ・ンルのフレンドが1人増えました!】
【ルン・バ・ンルは賭博場をじっと観察しています・・・】
【ルン・バ・ンルはディーラーに近づいて行きました!】
【「全額プッシュだ。」】
ざわ・・・ざわ・・・
【ルン・バ・ンルのフレンドリストに賭博場のオーナーが追加されました!】
【クエストクリア 大成功!】
【クエスト【鉄火場の火花――黄河の秘密の賭博】を達成しました】
ホクホク顔の俺は路地裏から這い出た。ツキがいいようだ。これだからゲームはやめられない。初期金額を資本に投資して軍資金を増やした俺は街をフラフラと歩いていく。
あぁ、そうそう。黄河じゃ公認の賭博場以外は禁止されている。高額レートの奴ね。
だが俺は投資しただけ・・・健全ッ・・・これはただの経済活動の一環に過ぎないッ・・・
圧倒的合法・・・
通りすがりのティアンがギョッとした。
心なしか鼻と顔が尖って伸び、目が$になっていた・・・。
まぁ片足だけ裏社会に突っ込んだだけだからセーフ!黒に近いグレー。デンドロ初心者で始めたばかりだからカルマ値はちょっと−になっただけだ。
これから秩序寄りの行動で巻き返して+に変えればいい。と言うわけで賭博場のオーナーから勧められた【開拓家】のジョブに就いて【開拓家】のギルドでジョブクエストを受けた。
ついでにサブジョブに【斥候】に就いておく。レベルを上げなくても初期スキルで低レベルだが汎用の《看破》《危機察知》《殺気感知》《聴力強化》《罠感知》などの有用なスキルが使えるからだ。些か薄暗い用途に使えるレパートリーなのは御愛嬌。
カルマ値が実装されているか知らないが俺は多数決の多数派につくぜ。数は正義だからな。
受けたクエストはクエスト難易度:一【補助依頼―龍都郊外 地質調査補助】。
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