そして輝くウルトラソウル
顔が合わせられねぇ。いったいどこまで行ってしまったのか知っていると思われるジーエン氏は顔を赤くしてそっぽを向かれておられるので、俺は迫り来る性癖の闇に怯えるしかなかった。
「昨日の事だけどね。」
ファッ!?
「天地って知ってる?凄い修羅の国。」
それが?
「戦闘職って凄い昂り易いから戦場でそういうことするらしいね。」
つまり?
「しゅ、衆道って言うんだけど。」
しゅ、衆道ですか。
衆道とは日本古来から伝わる同性間の文化である。狩猟時代から農耕時代になった時初めて人間間で奪い合いをするようになった。
闘争は種の本能を想起する。すなわち性欲、生存欲求、破壊衝動等だ。それを収めるためには性行為による解消が望ましかった。
しかし戦場に肉体運動能力が劣る女性は出せない。
だからキリンや犬などの野生の動物が同性間で性行為に及ぼうするのと同様に男性同士の性行為の文化が発展するのは時間の問題だったのだ。
生物の種は違えどもストレス解消の手段の一つとして生物の遺伝子は同性間での行為を肯定するようになっているのかもしれない。
それは人類の戦争の歴史に於いて必要とされた非生産的行為の一種だったのである。
「でも僕たちそう言うのじゃ無いし・・・僕も君も女性が好きだろう?」
そ、そうですね。口では決して出さなかったが、実際にやってしまった過去が説得力を怪しいものにしていた。
「だからこの話はこれでお終い。じゃ、そう言うことで。」
そう言うことになった。
まぁフレンドであること自体は変わりないので熱りが冷めたらまたクエスト一緒にやろうと約束して別れる。
バイバイと手を振る彼のサラサラとした白髪の触感が自分の掌に広がったのは、彼の男にしては長い髪が風に拐われそうになっていたのを見たからなのだろうか?
いつのまにかエロゲ世界に紛れ込んでしまったのだろう。俺はこんなにも女性との触れ合いを渇望していると言うのに。俺は所在もなさげに立ちすくんでいた。
自分の足を支える地面が思いの外容易くグラついてしまうことを知ってしまったかのような、今までの常識が壊れていきそうな危険な予感がしていた。
目の前をむさ苦しい男が通り過ぎる。前衛職なのか荒々しい傷跡が装備に刻まれていて、歴戦の古戦士といった雰囲気を醸し出していた。
ふわついていた感情は一瞬の交錯によって萎えた。
あまりの落差に眩暈がする。なんなんだこのゲームは?俺はいったいどこに向かおうとしているの?行き着いた時に隣に誰がいるのだろうか。重苦しい疑問だけが心に深く沈んでいく。
ゲームの運営は何も言ってくれはしない。ただ自由を与えられただけで、目指すべき地位も場所も功績もない。あまりに高過ぎる自由度が今の自分に追いやっているような被害妄想すら覚えた。
俺は・・・
【開拓家】ルン・バ・ンルだ。行こう。この世界の果てまで。
黄河の砂が混じった風が囁いているような気がした。きっと気のせいだが今の俺にはそれが一筋の蜘蛛の糸のようにすら思えたから。
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