女の生理、ベーネミュンデ、核戦争
「大変そうだね」
「男の身体って気楽でいいなぁ…ぅぅ…」
「で、向こうは、どうだった?」
「うん、面白かったよ。子爵家でお茶もよばれたし」
「へぇぇ」
妹に子爵家の豪華さとノルデンの息子たちが父親とそっくりだったことを語りながら入浴する。四葉も話を聴きたいので二度目だったけれど、いっしょに湯船に入っている。
「暗殺未遂とかあってアンネローゼさん、危なかったらしいし。あと、核戦そ…」
「え? 何?」
「………。ううん、何でもない」
「そこまで言ったなら言ってよ、お姉ちゃん」
「…………う~ん、本当に誰にも言っちゃダメだよ」
「はいはい」
「核戦争があったらしいよ、地球で。それで美術品とかも残ってるのが少ないんだって」
「核戦争……いつ?」
四葉の顔がやや神妙になる。三葉は軽く応える。
「調べようと思ったけど、やめた」
「どうして?」
「もしもさ、それが来週とか、来年ってわかったら、その日まで震えながら過ごすことになるんだよ? もし10年後でも、なんか就職するのがバカらしくなりそうだし、50年後でも、子育てするのが微妙な気分になりそうだしさ。ま、300年後くらいだと、関係なくて、ちょうどいいかなって思うけど」
「………なんとか防ぐとか。近いうちにあるなら」
「無理無理! そんなことができるなら北朝鮮からミサイル飛んでこないから」
「それは、そうだけどさ。知は力なり、フランシス・ベーコンの言葉だよ。知れば、なにかできるかもしれないよ?」
「う~ん……でもさ、あんまり未来を覗くのって……どうなのかな……たとえば、自分が子供を産むときでも、産まれてくるのが男の子なのか、女の子なのか、検査で知っちゃうと楽しみが減らない?」
「うちは代々、女の子しか産まれてないらしいよ、お婆ちゃんが言ってた」
「うっ……そういうの、知りたくなかった。やっぱり楽しみが減るじゃん」
「楽しみはともかく危険は察知した方がよくない?」
「う~ん……どうなのかなぁ……防ぎようのない災いならさ、いっそ、その日、その瞬間まで知らず、あっさり一瞬で死んじゃう方が楽でいいよ? きっと」
「…………はぁぁ………」
四葉は深いタメ息をついて風呂の湯に顔まで沈んだ。
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