ハーメルン
リィンカーネーションダービー ‐新人トレーナーがんばる‐
第13話:ハルウララ、新人トレーナーの『ウマ娘』になる

 それは暑さが本格化し始めた7月のこと。

 ハルウララはメイクデビューで9着になったものの、普段通り明るく元気にトレセン学園へ通っていた。

「あっ、スペちゃんだ! それにエルちゃんも! おはよー!」

 教室に向かう道すがら、ハルウララは友人である二人のウマ娘を見つけて駆け寄る。

 スペちゃんことスペシャルウィーク、エルちゃんことエルコンドルパサーの二人だ。

 所属しているクラスは違うものの、よく他のクラスに遊びに行くハルウララは学年中に友人がいる。そんなハルウララが駆け寄ってきたことに気付いたスペシャルウィークとエルコンドルパサーの二人は、頬を緩ませながら挨拶を交わす。

「おはようございます、ウララちゃん」
「おはようございますデス!」

 スペシャルウィークはハルウララと同じように地方出身のウマ娘である。エルコンドルパサーはアメリカ生まれの帰国子女で、ハルウララに返す挨拶も片言かつハイテンションなものだった。

「そういえばウララちゃん、昨日はメイクデビューだったんですよね? どうだったんですか?」
「アタシも気になりますデース! どうだったの?」

 スペシャルウィークとエルコンドルパサーの問いかけに、ハルウララは笑顔で答える。

「9着だった!」
「きゅ、9着……ですか」
「Oh……」

 笑顔で嬉しそうに言われた二人は、何と言えばいいかわからずに苦笑した。しかし、ハルウララはそんな二人の反応に構わずその場で飛び跳ねる。

「うんっ! でもすっごく楽しかったー! 二人はどうだったのー?」

 ハルウララは無邪気に尋ねる。その問いかけにスペシャルウィークとエルコンドルパサーは顔を見合わせたが、すぐさま苦笑したままで答えた。

「わたしはなんとか1着でした」
「アタシも1着デスよ!」
「わー! すっごいすっごーい! 二人ともすごいんだねー!」

 スペシャルウィークとエルコンドルパサーの返答に、ハルウララは心底嬉しそうに褒める。友人が1着を取ったと聞いて素直に賞賛できるのはハルウララの美点だろう。それを理解しているからこそ、スペシャルウィークとエルコンドルパサーは余計な引け目は感じずにハルウララと共に歩き出す。

「ウララちゃんはどんな感じのレースだったんですか?」
「わたし? わたしはねー、途中までいい感じだったんだけど飛んできた砂が目に入っちゃったんだー。ビックリしちゃったよ!」
「ダートだと仕方ないデスからねー。でもウララなら次こそ1着デース!」
「うん! トレーナーのおかげでどんどん速くなってるからね! 次のレースが今から楽しみなんだー!」

 ワクワクと尻尾を左右に振るハルウララの姿に、スペシャルウィークとエルコンドルパサーは微笑ましいものを見たように頬を緩める。

 ――この時のハルウララにとって、レースというものは楽しくてワクワクするものだった。
 




 そして迎えた、7月前半の未勝利戦。ハルウララにとっては2戦目であり、メイクデビューの時のようなアクシデントもなかったのだが――。

『どうだ!? ミニデイジーどうだ!? 2番手横一線! ミニデイジーに届くか!? ミニデイジー逃げ切るか!? ワクワクリボンが並んで今――ゴール! 3着争いは団子になってシャバランケ、コンブロマイズ、ハルウララ!』

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