ハーメルン
卑しか女杯さわやかカップ(G2)
IFルート2:マヤノトップガンEND

 最後の坂に入った。

 アタシの前には、やっぱりあの娘が居た。

「バクシンバクシンッ! バックシーーーーン!!」

「坂に入っても変わらない! ほんのわずかな差ではありますが、サクラバクシンオー先頭です! 自分より前に誰かが立つことを驀進王は許さないっっ!!」

「……!!」

 悔しい。
 悔しい悔しい!
 とっても悔しい!!

 作戦成功したつもりが、それを利用されてリードされちゃってるなんて!

(この勝負は、この勝負だけは、絶対負けられないのに!!)

 誰よりも真っ直ぐに、トレーナーちゃんにアタックし続けてきた。
 そして今日のレースに勝ちさえすれば、アタシの思いは必ず通じるってとこまで来た。

 今日のレースの主役は、間違いなくアタシのはずだった!!


(……なのに!!)


 最終直線。
 心臓破りの坂を一番最初に上り始めたのは、アタシじゃなくてバクシンオーちゃんだった。

 坂が得意なライスちゃんは中盤で消耗させられた。
 キングちゃんは大外に回る分のロスがある。
 ウララちゃんにとって今日の早いレース展開は間違いなく負担だったはず。
 だから、この坂でアタシがトップになれさえすれば、勝てるはずだった。


(なんで、なんでなんでなんでなんで!!)


 泣きそうになる。

 作戦はほぼ完ぺきだったからこそ、たったひとつの誤算に全部持っていかれるなんて許せない!

(でも、一番許せないのは……みんなの気持ちを勝手に下に見てた、マヤ自身だ!!)

 自分が一番、トレーナーちゃんのことが好きだと思ってた。
 この思いさえあれば、絶対に負けないと思っていた。

 でも、それだけじゃ足りなかった。 


(思いの強さも、そこにかけた情熱も、みんなマヤと同じか、それ以上にあった)


 だからここまで食い下がって、追いついてきて、今マヤの前にいたりする。 

 悔しい。
 悔しい悔しい!
 今以上の自分になれない自分が、悔しい!!

 逃げ切れない、差し切れない、何が変幻自在の脚質だ。

 勝てなきゃ意味なんてないのに。

 この勝負に負けちゃったら、マヤには何も、残らないのに!!



(……………………違う!!)

 今考えるべきはそんなことじゃない。

 まだ終わってないのに、勝負のあとのことなんて考えてる場合じゃない!!

「……負けるな、負けるなアタシ」

 萎えそうな気持ちに喝を入れる。

「マヤちんは、一番にキラキラしてるウマ娘。トレーナーちゃんと一緒に磨き上げた、見る人すべてを魅了する、さいっこうにキラキラしてる、大人のレディを目指す……まだまだ伸び盛りの、ウマ娘だぁぁぁぁぁーーーーーー!!!」

 成長しろ、覚醒しろ、今この瞬間にもっと、もっと速くなれ!!

 そうして前に進むアタシだからこそ、あの人は魅了されてくれるんだから!!



「やはり来ましたね、マヤノさん!」

「ううん、マヤは来たんじゃないよ。ここからも~っと先へ、行くんだよ!!」

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