IFルート3:サクラバクシンオーEND
ただ、一心不乱に前に進めと、私の心が叫んでいます。
それこそが絶対で、それこそが勝利に必要な要素なのだと、そう言っています。
ですが、本当にそれだけで勝てるのでしょうか?
「バクシンバクシンバクシンッ! バックシーン!!」
目の前には急こう配の坂。
直前に下りがあった分、余計に駆け上がるのがしんどそうな道です。
本当にこの道を、ただ真っ直ぐに走るだけで、私は勝てるのでしょうか?
「……ライスは」
何かが足りないと思っているその矢先、右側から聞こえてきたのはライスさんの声でした。
「ライスは、負けない……! ライスは、お兄さまと一緒に……未来を掴むんだ!!」
「!?」
ああ、なるほど。
私に足りないのは、彼に対する思いでしたか。
この坂をただ上るだけなら、私には造作もないことでしょう。
ですがこの坂を上り、かつ、ライバルの誰一人として私の前を走らせない。となると、話が違ってきます。
最後の勝利を掴むためには強い渇望、願いが必要なのだとあの人も言っていました。
だからこそ、すべてにおいて模範的な走りを見せるという私は、勝利に対する理想的なモチベーションを有する優等生らしい優等生だったわけですしね。
(そういえば、さっき私はマヤノさんの作戦に対して足を溜める選択をしましたね)
あれも今考えれば不思議な話です。
彼女のことなんて気にしないで、一心不乱にバクシンしていたらよかった気もします。
少なくともいつも通りの私ならそうしていたに違いありません。
もちろん、そんなことをしていたら終始ハイペースだったこのレース、今まさに力を失い、坂をヘロヘロになりながらバクシンすることになっていたのですが。
ではこうなることを予想していたのかと言われたら、違うような気がします。
(あの時は確か……そう、マヤノさんの作戦に乗ってしまうと負けてしまうから、と考えていましたね)
負け。
負けとは何でしょう?
私にとっての負けとは、模範的な委員長としての姿を示せなかったときが負けです。
つまり、誰よりも強いことを示せなければ負けというわけです。
(では、そうなりたくないから私は行動を変えた?)
これも何かしっくりきません。
重要な、とても大切な何かが欠けている気がします。
(やはり、ここは彼について考えるのが答えへの近道でしょう)
このレースに勝つことで得られる栄誉。
それはこの先もずっと、あのトレーナーさんと一緒にバクシンし続けられることにほかなりません。
私にすべての距離のレースで勝利する道を拓いてくれたあの人となら、トゥインクルシリーズで定められたすべての距離を越え、全世界あらゆるコースでバクシンすることが出来るに違いありません。
(だから私はここにいて、だから私は勝とうとしている)
ですがどうやらマヤノさんを始めライスさん、キングさんは同じ道を行くということにそれ以上の何かを感じている様子です。
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