ハーメルン
ありふれない青年が世界最悪
賢者の搭




 塔の中は石のレンガで構成されており、中々広かった。

 魔物が出現するわけでも、トラップが大量にあるわけでもない。ただただ階段と道が続いている。

 しかし、トラップが無いわけではない。一階層につき二、三個トラップがある程度だ。だが、階層一つが迷路のようになっているため、どこにトラップがあるかは判りづらい。

 京楽はトラップがありそうだと判断した場所に石を投げたりして、音の鳴り方を調べたり、仮に踏み抜いても、生まれながら何故か備え持つ超人的な反射神経で避けたり、アリスを守ったりしている。

 アリスは生物の気配や、自身への危険を感知出来るようで、アリスがヤバイと思った場所には近付かないようにしている。ちなみに、一度アリスがヤバイとは感じていたが、言わずに言った場所にヤバイトラップがあった為、今は素直に教えてくれる。

 そして今は……

「……アリス、パズルは順調か?」
「うぅ、全然解けないよぉ」

 次の階層へ行くための階段にあるパズルを解いている。

 パズルはキューブ型のモノで、スライドして組み換えながら特定の形を造ると言うものだ。今までにも階段の中継地点にパズルや謎解きは存在したが、全て京楽が解いていた。謎解きは職業柄割りと得意で、パズルも暇さえあればやっていたぐらいには好きなので特に苦ではなかったが、アリスはそれが我慢ならなかったらしい。

 今の今まで、アリスは京楽の後ろで京楽がトラップを解除したり、トラップを探したり、発動してしまったトラップからアリスを守ったり、パズルや謎解きをしているのを見ていただけだった。

 京楽は師匠的な立ち位置だが、一応は仲間なのだ。なんだか足を引っ張っているようで嫌だったらしく、パズルをやっている途中だった京楽に、変わってほしいと頼んでパズルを解いている。ちなみに、京楽はパズルの答えをある程度導き出せたが、わざと教えていない。

 アリスが進んで自ら成長しようと頑張っているのだ。助けも呼ばれていないのに手を貸すのは野暮と言うものだろう。アリスが助けを求めればヒントは出すつもりだ。アリスがやり遂げなければ意味は無いのだから。

「うぅ、こんなに難しいなんて……師匠はなんでこんなに難しいのをパパッと解けちゃうんですかぁ」
「慣れと経験値だ。パズルや暗号解読、数式の計算や式の算出。項が解れば自ずと解も分かる」

 京楽はそんなことを言っているが、数学は苦手科目だ。まぁ、苦手とは言っても学年上位に食い込み続ける程には出来るのだが……ここでは関係のない話だ。

 アリスは、京楽のそんな言葉を聞いて、唸りながらも考える。京楽はそんなアリスを見ながら一階層にあったパズル、ルービックキューブ擬きで遊んでいた。ちなみに、ルービックキューブは縦横六マスの立方体で、少し手間取ったが、十秒程度でクリアした。

 アリスはそれから二時間ほど粘り、京楽にヒントを貰ってから勝手が解ったのか、一分ほどでクリアした。あまりの嬉しさにアリスが達成感に浸かりながら喜び、京楽はそれを褒める。

「……時間はかなり掛かったが良くできたな。お疲れ様だ」
「は、はい! なんとかできゅっ」

 「なんとか出来ました!」と報告しようとしたが、舌を噛み、プルプル震えながら痛みを堪えるアリス。残念な子と言えば良いのか、ドジと言えば良いのか迷うが、アリスの場合はポンコツなのだろう。

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