ハーメルン
283プロの眠り姫事件
幕開け ~デパートコスメにて~


 円香はため息を吐く。

「仕事でしょ。事務所にいなきゃ」
「そうなんだけど……。そうなんだけど……! 年単位で待ったのに……!」

 今にも泣き出しそうな甜花に、「いや、なにもそこまで……?」と円香は心の中で突っ込む。

「甘奈が代わりに並べばいいんじゃない?」
「甘奈も、そう思ったんだけど……その……」

 一度は言い淀んだ甘奈だったが、頬を掻いて苦笑しながら句を繋ぐ。

「その日、ずっと欲しかった香水の発売日なんだよね……。そっちに並ばないと……」
「この双子は……」

 方向性が違うだけで、欲求には素直なんだな、と円香は頭痛を覚える。
 だが、思うところもあり、「あー……」と中途半場に口を開いてしまった。
 不思議に思った二人が首を傾げたが、

「別に、何も。どうでもいいし。……当日、頑張って」

 と、円香はいつもの淡々とした口調で答えていた。

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