戦間期~第二次内惑星戦争時
遊星爆弾によって独立を勝ち得た火星であったが、その内部では不満の目がくすぶっていた。
外交を第一と考え、その後のことを考えた場合、往々にして戦争は勝ち切らないほうが良いことがある。
第一次内惑星戦争はまさしくそれであったのだろう。
地球に遊星爆弾という戦略兵器を突き付けたうえでの講和は、地球全体の敵として火星を認識されかねないという危惧が付きまとった。
そのうえで無差別の使用を行うのではなく月の軍事施設だけをピンポイントで狙い、交渉で戦争を終わらせた火星の外交官は切れ者であった。
そして講和条約においても要求は最小限度にとどめ尚且つ、火星のインフラ代金として無利子無担保ではあるもの火星開拓費の分割支払いを譲歩したのは後々の禍根を残さない細やかな気遣いを見せたほどだ。
過去講和条約で穏健な対応に始終することの難しさは枚挙にいとまがない。
こと民主主義国家においては国民感情に配慮する必要がある。
一応の民主制を敷く火星においてはこの点に最新の注意を図り情報統制を行い、徹底的に講和条約の内容を隠し、勝利の喧伝だけを行った。
過去戦争突入に際し国民の統制が取れなかったことを教訓としたのだ。
この火星の努力は、実を結ぶことはなかった。
実際には20年ほどの猶予期間を置き、第二次内惑星戦争が起きたのだ。
しかもこの時の軍事行動は地球側から始めたものではなく火星が始めたものだったのだ。
戦争終結直後、地球は混乱の一途にあった。
参戦直前に有志連合から梯子を外された事もそうであるが、何より新たな戦略兵器たる遊星爆弾がすべてを変えた。
遊星爆弾はそれほど地球の国家たちにとって脅威だったのだ。
火星軌道からマスドライバに依って打ち出される隕石はそれ単体で戦略核兵器を上回る威力を発揮する。
火星からの到達が1月ほどかかるという欠点を除けば圧倒的アドバンテージなのだ。
更に、地球における先進各国はかつて独立したアメリカ合衆国を思い起こし危機感を募らせた。(その中には当然独立を勝ち取ったアメリカも含まれる)
かつて一つの大陸丸ごと国家となったアメリカはそのポテンシャルを生かし覇権国家となった。ばらばらに戦争を続ける旧大陸をしり目に。
更に戦後不況が事態を悪化させる。
何せ動員直前で講和となったのだ。兵器産業を中心に増設されたラインは過剰提供となる。これは過去二度の世界大戦と比べ国土と生産力にダメージが少なかったのも要因の一つだろう。
ともかく過剰提供から始まった価格の大暴落は戦争によって滞った土星圏の資源が一気に流入したことでコントロールできない大不況となった。
これは結果として地球中心の経済圏をより強固にそして閉じることにつながった。
火星との経済交流の低下は相互不信の温床となる。
そして不満のはけ口として火星ほど有意義なものはなかった。これは火星でも同じことであった。
徹底した情報統制を行った火星の政権は、戦後増税を減税するという謳い文句で政権交代をはたした野党によってその秘密を暴かれることなる。
独立を果たしたものの今も血税の多くが地球に送金されているという事実は火星市民の怒りを買い、野党はその怒りを地球へと仕向けた。
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