プロローグ
地面から岩が何本も突き出て荒れているキラル荒野と呼ばれる場所。
そこはまさに地獄とも言える惨状だった。
一斉に放たれる弓矢やマスケット銃の弾丸、魔法使いより放たれる炎や雷、氷が飛び交い、直撃を受けた兵士達は次々と絶命する中、剣や槍、斧と言った格闘武器を持った兵士達や、ゴブリンやコボルト、リザードマン、ゴーレム等の魔物達に対し、人の姿に獣の耳や尻尾を持つ獣人、額に角が生えたオーガやも人型で獣の姿をした妖魔族で構成された多くの者達が敵国の兵士に向かって走り、武器を振るう。
この戦争の発端は『バーラット帝国』が『グラミアム王国』へ侵攻を始めた事が始まりだった。
元々両国の仲はかなり悪かったが、その原因は種族偏見がほとんどを占める。
バーラット帝国は人間至高主義の塊とも言える国で、獣人や一部の妖魔族など人間の姿を模した存在は滅ぼすべき存在と周辺国に豪語するほどだ。
一方のグラミアムは獣人や妖魔族を中心に構成された国家であるが、周辺の人間の国との関係は良好で、決して人間嫌いではない。が、帝国のみは例外だ。
それ故に両国の関係は長きに渡って劣悪に等しい状態が続いていた。
そして遂にバーラットは亜人と称する獣人と妖魔族を滅ぼすべく、グラミアムを含む周辺国へ宣戦布告をしたのだ。
そうして数年の時が経ち、今に至る。
ある獣人は敵兵と剣と剣をぶつけ合って鍔迫り合いをし、槍を突き出して獣人の腹に突き刺し、斧を横に振るってコボルトの首を刎ね飛ばし、ハンマーを振るい敵兵の頭を吹き飛ばす。
ある者は生命力が強く中々死なないゴブリンに跨って剣を何度も突き刺し、リザードマンが妖魔族に噛み付いたり、獣人が槍を投擲してコボルトの頭を突き刺す。
先込め式のカノン砲から撃ち出された砲弾や投石器より放たれた岩が着弾し、その下に居た妖魔族や獣人は潰されて辺り一面に血を撒き散らし、近くに居た人間を吹き飛ばす。
至る場所で怒声や悲鳴、悲痛な叫びが上がり、死体の山が次々と出来上がり、阿鼻叫喚な光景が繰り広げられている。
「怯むな! 亜人共などおそるるに足らん! 突き進め!!」
バーラット帝国軍の指揮官の一人が大声で叫び、それに答えるように兵士達は雄叫びを上げながら突撃する。同時に馬に乗った騎兵隊、ドラゴンに跨り空を飛ぶ竜騎士たちも続く。
獣人や妖魔族を中心に構成されたグラミアムの兵士達は人間より数倍優れた身体能力を以ってしても、その猛攻の前に劣勢を強いられていた。
その要因は装備の違いが大きくある。
帝国軍は最新式の武器防具ばかり。それに対してこちらは旧世代の武器防具ばかり。その上物量も圧倒的に向こうの方が上だった。
誰もが向こう側に有利であると見て分かる状態であり、帝国軍側の兵士の一人もそう思っていた
――――が、ある異変に気づいた兵士が、空を見上げる。
空は大小の雲がある以外は快晴の空があり、太陽の光が戦場を照らしている。
太陽の光でまともに見る事はできないが、一瞬だけ太陽に黒い影がいくつか見えた。
しかも、その黒い影はどんどん大きくなる。
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