ハーメルン
異世界戦記
第十三話 戦いの始まり



「……」

 俺は城の敷地内に待機している部隊と合流し、設置した天幕の中で腕を組んで目を瞑って深く考えていた。

(さて、将軍達にはどう俺達のことを説明するか)

 明日に予定されている攻撃後、俺たちの正体を問われるのは十中八九あると見てもいい。しかしその説明次第ではこちらがどのような存在と見られるかが確定される。

(本国のことを隠し通すか……いや、それじゃ逆に怪しまれるか)

 あれだけの兵器を持っているとなると、国無しで運用できるとは考えづらいと思われているだろうし、何より俺たちを怪しんでいる輩も少なからず居るだろう。

(やっぱり全てを話すか。だが、少しばかり盛って話すべきかな)

 この世界に来て二年は経つが、そんな短期間であれほどの兵器を持っているとは相手も信じ難いだろうし、更に怪しまれる可能性は高い。

(……小尾丸は別の世界からここに転移してきたと言ったな。俺もある意味同じ境遇だから、これを大いに使うとするか)

 異邦者が築き上げた国。それはそれで大騒ぎになるも、それしか向こうを納得させられる説明はない。

(難しいが、やるしかねぇな)

 目を開けて深くため息を吐く。


「岩瀬中佐」

「は、はい!」

 と、慌てた声とともに天幕に岩瀬中佐が入ってくる。

「今から司令部に繋がるか?」

「え? は、はい! もちろんであります!!」


 岩瀬中佐に連れられて俺は天幕を出て無線機が設置している天幕に入り、前哨要塞基地経由で司令部と繋がる。

『それで、その資料を今すぐに作成してほしい、と?』

 疑問の色が見て取れる声色で品川大将の返事を聞き、俺はすぐに答える。

 内容は結構短時間で仕上げるにはかなり難しい凝った内容だが、これくらいしないと向こうも信じないだろうと判断したからだ。

「あぁ。それも早急にな」

『難しい事を注文しますね。でも総司令の命令とあらばお任せあれ』

「不備の無いように、頼んだぞ」

『ハッ!』

 そうして通信を終え、俺は岩瀬中佐に向き直る。

「というわけだ。中佐には今から俺が言う事を頭に叩き込んでくれ」

「は、はい! 勉強させていただきます!!」

 中佐はすぐさまメモとペンを用意して、準備万端だった。
 と言うかいつも持っているのか?


 しばらく中佐に情報を伝えた後、俺は天幕を出てあくびをしながら自分の天幕に戻ろうとしていた。

「ん?」

 偶々庭木の方を見ていると、白い髪がちらほらと見えていた。

「……リアスか?」

 俺が名前を呼ぶと、庭木の陰から白い尻尾の毛が逆立って飛び出る。

「どうしたんだ?」

 そう問い掛けるもリアスは庭木の陰から飛び出てきて城へと走っていくと、入り口から中へと入っていく。

 ちなみにその際顔が真っ赤だったが、弘樹は暗くて気付いていない。

「……?」

 リアスの行動に疑問を浮かべて首を傾げると、しばらく悩むもまだ仕事が残っているので天幕に戻る。


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