第十五話 扶桑来国
『……』
ガタガタと揺れる一式陸攻の機内では、将軍を含む高官達が緊張してか体が固まっている。
その様子を向かい側の席に座る俺は苦笑いを浮かべる。
「しかし、自分で飛ばずに飛ぶというのは、妙な気持ちだな」
俺の隣に座る小尾丸は窓から空の下の景色を眺めながら、呟く。
結局魔道士の治療魔法を以ってしても、彼女の左の翼は損傷が激しく治療ができなかったらしく、彼女は永遠に空を飛べなくなってしまった。
「まぁ、慣れてしまえばどうってことは無いだろう」
「そういう問題では……」
「……」
小尾丸の反対側に座るリアスは、揺れる機内に怯えてか俺にピッタリとくっ付いていた。
その光景を辻と品川がムッとして見ていた。何で?
「……その、何だ? 大丈夫か?」
俺が問うと、リアスは小さく頷く。
(まぁ、飛行機に初めて乗るんだから、怯えて当然か)
内心で呟きながら、ピタリとくっつくリアスを見守る。
と言うかやたらと視線を感じる気がするんだが、気のせいか?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「そろそろ我が扶桑国内へ入ります」
俺がそう伝えると、将軍や小尾丸、高官達が窓から外を眺める。
前哨要塞基地の上を通り過ぎ、俺達を乗せた一式陸攻は領空へと進入する。
「これが、未踏の地だというのか?」
「気候変動など無いではないか」
窓から景色を見ていた高官達は伝承とは裏腹に穏やかな気候に誰もが声を漏らしていた。
「あれが扶桑です」
と、一式陸攻は扶桑上空へと到着する。
見たことの無い建造物が多く並ぶ市街地に高官達の視線は釘付けだった。
小尾丸とリアスもまた、初めて見る建造物が並ぶ市街地に釘付けとなっている。
そうして一式陸攻は陸海軍共有の滑走路へと着陸し、俺達は外へと出る。
周りには見たことの無い物がいっぱいあり、将軍たちは左右に首を振っている。
「では、順にご案内いたします。しかし軍事機密に当たる場所の案内は省かせてもらいます。それと、勝手な行動は慎むように、お願いします」
忠告のように俺が将軍達へそう言い、飛行場を後にする。
ちなみにこの言葉の裏には『勝手な行動をしたらどうなるか、分かっているな?』という意図が含まれている。
その意図の通り、飛行場を出た後憲兵隊数人が将軍達を囲うように歩く。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その後二班に分かれて各所を案内されるようになり、俺は品川と辻を引き連れて将軍と小尾丸、リアスと共に海軍の軍港に来ていた。
『……』
そこで見る物に、三人は呆然としていた。
「さ、サイジョウ総理。海に浮かんでいるのは……全て船ですか?」
「えぇ。我が扶桑海軍が所有する軍艦です」
「まさか。何という大きさだ……それに、全て鉄で出来ているのですか?」
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