ハーメルン
型月転生
第3話・倉庫街にて

 あれ……おかしいなぁ……。
 俺の目の前にはショーケースに納められた展示品と、それに付随する形で並ぶ数々の衣服があって……。
 隣には薄紫色の髪が綺麗な女の人がいて。

「お買い上げ、ありがとうございました」

 どうして、こんなにも財布が軽いんだろう。

「いやいやキャスター。問題は無いけどさぁ……」
「あらあらマスター。好きなだけ買ってやると言ったのはどちらだったかしら?」
「異論は無いんだけどね? 何かおかしいだろ、うん」

 他陣営の目を晦ますため、礼装の完成を待って俺とキャスターは出かけることにした。
 道中は霊体化して別行動。目標となるデパートで俺が適当な服を買って、男女共用車椅子トイレで実体化して貰った。
 後ろで生着替えが行われているというのはそこそこに心に響いたが、振り向いたら殺されそうなのでやめておいた。

 因みに、礼装の能力はとんでもなかった。キャスターに扱わせれば、夜の間のみ持ち運び式極小神殿へと早変わりする。
 流石神代でも最高峰の魔術師が、我が数千年前の神秘を使い潰して作った礼装である。
 ……まぁ、たまたま発掘しただけで、神代から保有してたわけじゃないんだがな。
 俺は元々戦う気もなく、そもそも魔力を大量消費する戦い方でも無いので、キャスターに使ってもらうことにした。

 ……いやいや、現実逃避はやめよう。
 魔術師的な生活を送ってきた俺は女性の服装など知らんよ状態であったので、買ってきた服はあまり気に入られなかったらしい。
 文句を言うキャスターに、"じゃ、好きなだけ買ってやる"と言ったところ今にあたる。

 基本クレジットだけど、なんか財布の中身が軽くなっていくような感覚は嘘では無いだろう。

「ほらほら、綺麗でしょう? 使い魔の身嗜みは主人の格よ?
 私のせいでマスターが恥をかいては元も子もないわね」

 笑い顔でそんなことを言ってくるキャスター。
 冗談だと理解しているのだから、尚更性根が悪い。

 お陰様で婦人フロアに散らばったマダム共からの"キャッキャうふふ"的な微笑とかが心に刺さる。
 上客だと思われたらしく、さらっとジュエリーショップに案内された挙句ネックレス買ってくし。

 紺色のワンピースにベージュのカーディガンにダイヤかなんか使われてるティアラに……ああ、考えるのが嫌になってきた。

「ところでマスター、何処かでお茶にしないかしら?」
「ん……そうだな、近場に店があった気がするから、行ってみるか」
「ふふふ、任せるわね」

 デートって女の子に財布出させちゃいけないから、俺は正しいんだと取り敢えず思うことにしようか。
 一国の王女様だ。寧ろこれくらいの出費で済んだことで潔く諦めるとしよう。

 とことこと歩くこと約5分間。流石に長時間歩かせるのもどうかということで近い店を選んでみた。
 元々デパートである以上、そういう店には事欠かない。一応ね、ある程度の展開を予想して動かないといけないわけだ。

「いらっしゃいませ〜」

 ウェイターの呑気な声と共に、俺たちは席に案内された。
 空いた店内で用意されたのは奥まった場所の2人席。男女の2人に対して概ね正しい対応だなと、ウェイターに内心プラス点をつけておく。

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