ハーメルン
型月転生
第5話・微妙なズレ

「ランサーは脱落ね」
「素直に喜ぶ……べきなんだろうなぁ……」

 耳元にかかる吐息が生々しく、それでいて気持ちいい。どことなくこそばゆいような感じがしたが、現在はそんな感傷に囚われていてはならない。
 思考をさっさと魔術師用に切り替える。俺にとって、情報は切り札に等しいのだから。
 もたもたとしていてはいつの間にか詰んでいる可能性が高い。
 今俺が冷静に思考をしていられるのは、サーヴァントが二騎いるという優位性と、キャスタークラスの特性から、戦闘を比較的しなくて済んでいるからだ。

 俺は一対一ならばマスターに負けるとは思っていない。それが切嗣であろうと、総力戦になれば負けはしない。無論、油断は死を招くが。
 サーヴァントには勝てないがな。

「──────Je suis ici」

 ───俺は此処にいる
 もはや呪いの領域とさえ言えるであろう言葉。皮肉も良いところだ。俺はそもそもこの世界に生きていたわけではないのだから。
 それは、出力は弱いものの、その希少性のみで言えば『虹』にすら匹敵するであろう俺の魔眼起動のキーワード。
 転生して良かったことなどこれしかないのだからそれくらいはして貰わなくちゃ困るが。
 出力の関係上、サーヴァントには勝てない。だが、コレを使えばケイネスだろうと俺は負けはしない。

 ただ、著しく精神力かつSAN値とか色々と消耗するので出来るだけ使いたくない。
 一人に勝てても、使用後の俺はウェイバーにすら負ける一般人となる。

『俺は二君に使える気はない!』

 ソラウが強制的に契約しようとしたものの、"俺は二君に使える気はない"と一蹴。ソラウの手を強引に振り払って、そのままランサーは去ってしまった。
 最期だけそんなことされると、思わず失笑が漏れるというもの。あの陣営は結局最後まで相互理解が出来なかったらしい。
 ……まあ、こっちも一緒か。人のことは言えないな。

───令呪欲しかった‼︎ ついでにいえば刻印も‼︎ 燈子に売れば金になったのに‼︎

 まぁ、後で回収できたら回収するとしようか。

 相性が悪いランサーが脱落に等しい状況になったというのは非常にありがたいのだが、なんとも言いがたい気分である。セイバーの左手は解放されたわけだし。

 後は衛宮切嗣と言峰綺礼のガチ戦闘である。
 ……あ、良かった。目がついていけてる。強化掛けまくってるけど。

 でもな……厄介だなぁ……。

「今のうちにアサシンは叩いておくべきか……?」
「いいえ、消すべきよ」

 呟きが漏れ、意外にもさらに過激になった返答が来た。
 すっかり隣にいるのが当たり前になったキャスターの言葉に苦笑を返しつつ、その真意を問うことにする。

「より大胆に動けるわ。
 分体とはいえ、80前後のサーヴァントを警戒しなくちゃならないなんて厳しいわよ」
「成る程な。策は?」
「その為のコレでしょう?」

 さらっと笑顔で返され、白魚のような指がナニカを指差す。
 そこには、魔力の生成効率を上げるためにすっかりショゴスのようになった間桐雁夜が存在していた。
 ……キャスターが気持ち悪がったので培養液と言う名のエリクサー(5%)に漬け込んで部屋の隅に放置してある。俺も気持ち悪いと思う。

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