探
月魔術を習得してから、また随分と時間が経った。
月魔術の使用感はなかなか良いもので、不便はほとんど感じられない。
効果の分類は多岐に渡り、衝撃や時間の経過、固着する呪いなど、様々だ。
使えば使うほどに、新たな利用法が頭に浮かんでくるほど利便性がある。
私が生み出した月魔術をいくつか紹介しよう。
まずは基礎的な、光を生み出して辺りを照らす、“月の発光”。
体の一部を光らせるだけの極々単純なものであり、魔法に分類していいものか疑問ではあるが、結構役に立っている。
次に生み出したのが“月の蛍”で、これは“月の発光”を遠くに飛ばし、操る魔法である。効果はそのまま。単純なのでこちらの体得も容易であった。
そして、次にはいちいち天体を確認しながら時間を測るのが面倒になっていたので、擬似的に今現在の天体を宙に映し出す“月時計”を、明かりの後すぐに発明した。
月の魔術は時間、天体の運行に大きく関わるものなので、現在の天体を感知して形を変える魔法を生み出すのは、意外と簡単であった。
発動すると、自分の頭上に簡略化された天体図が広がるので、そこそこわかりやすく、重宝している。
また、月魔術は物や生物に固着する性質も持っているので、それを利用した呪いの開発も大いに捗った。
呪いといっても、魔法の効果を持続させるだけのものであるので、単純に恨んで相手をコロリと始末するようなものとは、少し違う。
私の利用法も、目印になりそうな大岩などに“月時計”を呪いとして固着化させるといった単純なものが多いので、危険性は微塵も存在しない。
ただ、魔力を扱ったのが私であるためか、私がそこへ近づかなければ天体図が浮かばないというのが、唯一の難点であろうか。それと、夜でなければ光が薄すぎて全然見えない。
ああ、それと同じく、呪いの性質を利用した“月の標”という魔術も開発したのだ。
これは“月時計”の呪いから天体観測の機能を取り払い、ただその場で発光するだけ……というような、非常に地味な魔術である。
ただしこの魔術は、近くに私がいなくとも光るように設定されており、月の鮮明な夜には、遠目からでもわかるほどの輝きでもって、呪いある場所にホログラムのような像を浮かび上がらせる。
浮かび上がるのは、輝く頭蓋骨の像。実に不気味であるが、道標なので“これ作ったの私だからね”という主張は、あっても構わないだろう。
どうせあと何億年も、この地球上でその不気味さを知覚できる者はいないのだから。
もちろん、こういった生活や魔術研究の補助以外にも様々な魔法を開発したのだが、どうでもいいものから説明の難しいものまで沢山あるので、紹介はここまでとしておこう。
長い間、本当に色々あったのだ。
「クラゲっぽい生物、とったどー」
数十分の海中遊泳の後、海面に顔を突き出し、捕獲した獲物を高く掲げ上げる。
透明なクラゲである。いや、クラゲ……っぽいような、何かである。詳しくはわからない。少なくとも形がクラゲではない。
そのまま海岸を上がり、地上へ出る。カラッカラの体のあちこちに空いた穴や切れ目から、海水が滝のように落ちてゆく。
ちなみに、長時間水中に潜っていても一切ふやけない体なので、全く気にする必要はない。
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