ケイネスは心配性
ちょっと意味がわかりませんね。便利すぎて困る遠見宝具を見ながら、俺は心の中でつぶやいた。実際は言葉程度の動揺ではなく、背中が煤けてすらいるだろう。
事の始まりはどこだろうか。少なくとも、俺がきっかけになっているのは間違いないのだろうが。上手く動いていない頭の中を、なるべく整理してみる。
まずは、今日の朝だ。俺は遠見宝具を出しっ放しにしていた。どうやら桜は遠見宝具を気に入ったようで、暇があれば見ている。これは俺ではなくても調整ができる。相変わらず無表情だが、彼女は自分で対象を変え、使用していた。……ストーキング的なウォッチング趣味に目覚めないことを祈るばかりだ。
そして昼頃、聖杯と言うか監督者から招集がかかった。当然、これに応じないという選択肢は無い。こちらが目をつけられるし、情報も欲しかったから。
しかし、連絡手段は問題だった。俺の元が元だけに、目立たず何とかする方法が全くない。仕方が無いので、最低ランク宝具を飛ばしたのだが。最低でも宝具は宝具、目立つことこの上ない。到着した時、言峰なんちゃらにすごいぎょっとした顔をされた。きっとどの陣営も、使い魔の向こう側で同じような顔をしていただろう。
予想通り、かなり詳しく情報公開をしてもらえた。ただ、向こうもアサシンの存在は隠しているのか、見失ったのか。現在地までは教えてもらえなかったが。宝具を撤退させる際、そっと紙を一枚置いていった。あれを言峰が発見していれば、切嗣にストーカーのごとく粘着質さを見せてくれるだろう。そして出来れば出歩かないでくれ。
桜から遠見宝具を返してもらって、町の可能性が高い場所を探したが、やはり見つからない。幸運が低いのだろうか。出向いて探す気はさらさらない。効率は宝具を使うのと大差ないからだ。それに、下手に他の陣営とあって遭遇戦をするのなどごめんだし、共同作戦で戦法を見せるのはもっと嫌である。
ちなみに、宝具を取り上げても、桜からは特に抵抗がなかった。どうやら彼女、見ること自体が楽しみなようで、何を見るという目的はない様子。それはそれで危険な気がしたが。
探索を続けては失敗し、はや夕方。町中で発見は失敗したので、アインツベルン城の森の入り口で張ることにした。しかし、これも問題だ。森はかなり広域に広がっているのだ。つまり、入り口が1カ所な訳が無い。普通に開かれて、徒歩に適した場所で数カ所。道を歩く気が無いのなら、どこから入ったっていい。
この広大な範囲を、限られた場所だけ張る。この時点で失敗フラグだ。それでも俺は頑張った。そして失敗した。もう泣きたくなった。今までの運頼りは全部空振りである。
発見した時はセイバーとキャスターの戦闘がすでに始まっていた。それでも隙あらばばと言うことで、準備だけはしていたのだが。そのうち、セイバーの動きがやたら落ち着き無くなった。
何事だ。まだランサーも到着していない。視点をかえて、原因を探してみると、なぜか予想より遙かに早く言峰が強襲している。なぜだ。俺が余計なことをしたからですね。それでも、この時までは問題ないと思っていたのだ。
ランサーの到着とほぼ同時、なぜかバーサーカーが出てきた。他の二人には目もくれず、海魔をなぎ倒し始める。セイバーはさっさと戦線を離脱して、アイリスフィールの援護に向かった。
訳が分からない。バーサーカーの出現とか、どうやって連絡を取ったとか、疑問が山ほど出てきた。考えられる理由は一つだ。それ以外に考えられない。
どう見ても切嗣と雁夜が同盟を組んでいます、本当にありがとうございました。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/9
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク