ハーメルン
悪徳の都に浸かる
006 四者四様デッドチェイス


 この悪徳の街に住まう人間は総じて危機察知能力が高い。それがここで生きていくに必要な能力だからだ。ロアナプラに来て日の浅いロックですらそれがいかに重要かは身を以て知っている。
 そんな彼らが警鐘を鳴らす。現在のイエローフラッグは超が付く程の危険地帯だと。
 ロックもベニーの意見に全面的に賛成だった。非戦闘員である自身が鉄火場のど真ん中に放り出されて生き残る未来は全く見えない。
 それに今はガルシアを連れている。倒れている男がダッチの言う通りマニサレラの人間なら、まず間違いなくこちらにも火種が飛んでくるだろう。もしかすると少年の言っていたロベルタというメイドが彼を救出しにやってきたのかもしれない。
 ガルシアの言葉を鵜呑みにするつもりはなかったが、この現場を目の当たりにして少しだけ真実味を帯びたように思う。
 だがダッチとベニーが踵を返し、船へと引き返そうとする中にあってただ一人。レヴィだけが酒場へと視線を向け続けていた。

「レヴィ、ここは一旦出直したほうがいい」
「…………」
「おいレヴィ」

 ロックの言葉にレヴィは答えない。鋭く細められた眼光がまっすぐにイエローフラッグへと向けられたままだ。
 訝しむロックに代わって、ダッチが声を荒げた。

「レヴィ! こっからずらかるぞ!」

 それが端を発したのかは定かでない。
 ダッチやベニーが感じる危機感を象徴するように、彼女はゆっくりとホルスタから愛銃を引き抜いた。
 次いでイエローフラッグの内部から複数の銃声が響き渡る。

「レヴィ!? 何してるんだ早くダッチたちのところへ!」
「……無駄さ」

 マガジンを確認し、両手にカトラスを握ってゆっくりと酒場の入口に向かって歩き出す。

「どこへ向かったって、この嵐からは逃げられそうにねえぜロック」

 直後、爆炎がイエローフラッグを飲み込んだ。



 7



「おいウェイバー。一から十まで説明してくれるんだろうな、ええ?」
「そう怒るなよバオ。今だって助けてやったろ」
「もちっとスマートに助けろよ! おかげで床にキスする羽目になったろうがッ!」
「鉛玉じゃないだけましだよ」

 イエローフラッグのカウンター内、頭を低くした状態で、俺はバオとそんな会話に勤しんでいた。
 一つ壁の向こうではマニサレラの連中とロベルタが絶賛交戦中。いや交戦というよりは一方的な蹂躙に近いかもしれないが。そもそもあの武装はなんなんだ、仕込み傘で許されるレベルじゃないだろアレ。散弾銃のくせに威力が対物ライフルクラスとかどんな改造すればそうなるんだ。しかも片手で軽々と撃ってやがるし。
 いや、そういえば昔も対物ライフル二挺振り回してたっけか。なんなのアイツ戦闘人形かなにかなの。
 こうしている今もマニサレラの構成員たちは散弾銃で身体を吹き飛ばされていく。どう見ても三メートル以上吹っ飛んでるよなぁ、アレ。
 この場に留まっていてもなんらメリットはないため、本当ならすぐにでも外に出たいところだが、残念ながら正面の入口が戦場になってしまっているために使用できない。ならば裏口かと考えたが、どうやら裏口は外に待機しているマニサレラの連中が固めてしまっているようだ。ここで出ていけば面倒な事態になるのは想像に難しくない。

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