第15章 少女の本音
夕焼けの空に響く剣戟。
「ちょっと相手しない間に腕・・・上げたじゃな、いっ!」
「くっ・・・!」
一歩踏み込んでの槍の横薙ぎを受け止めようとするも
そのまま大きく後ろに吹き飛ばされる。
「アリスさん。
相手の一撃が、どの程度かを見極めるのも重要です。
重い一撃は、可能な限り避けるようにして下さい」
「そ、そう・・・言われても・・・」
肩で息をするアリス。
決闘をすることになった彼女に、少しでも協力しようと
セレナが言い出し、こうして放課後の居残り練習となっている。
「セレナさん、まだいけますか?」
「まあ、あと何回かぐらいは・・・ね」
少し疲労の色が出ているセレナ。
彼女には『徹底して重い一撃』だけを放つよう指示している。
そしてアリスは『回避と防御のみ』しかしないように言ってある。
何故なら、リリスから聞いた話によると
レイナの武器は、馬上で使う突撃槍だという。
そもそもアレは振り回すようなものではない。
馬による速度と重量をそのまま勢い良くぶつけるだけのものだ。
しかしそれを使うということは、それなりの腕力があるということ。
そしてアレを振り回すということは、大技というか重い一撃を中心とした
一撃必殺であろうと予想出来る。
ならばその重い一撃の対処さえできるようになれば
かなり良い勝負になるだろうと思い
アリスにその対策をさせている・・・という訳だ。
「それにしてもアリスの『能力』は、いまいち効果が薄いわね」
「そう言われてもなぁ・・・」
セレナの何気ない一言。
しかしそれは、私も感じていたことだ。
精神・感情が力となるなら、かなり強力なものだろうと
思っていたが、多少全体的な強化をしているだけなのが現状だ。
「もっとこう・・・やる気になれば違ってくるんじゃない?」
「い、いやいや!
私これでも結構真面目にやってるってっ!」
手抜きなのではないかという疑惑を向けられ
慌てて否定するアリス。
「そんなことより、セレナ。
いつの間にこんなに強くなったの?」
「いつの間にって・・・前からこれぐらいは出来るけど?」
「ええっ!?
前に勝負した時は、こんな動きしてなかったじゃないっ!」
「それはそうでしょう。
だって手加減してたもの」
「な・・・どうしてよ?」
「最近のアナタは、リシアさんに鍛えてもらってるから
かなり強くなってるけど、前までのアナタは
正直、そんなに強くはなかったから。
そんな人間に本気なんて出す訳ないでしょう?」
「うぐっ・・・!」
文句が言いたいが、相手の言い分もある意味正しいので
何とも言えない表情を浮かべるアリス。
「あのねぇ・・・私、一応これでもバルズウェルトよ?
大侯爵の令嬢としての立ち振る舞いぐらい出来なくてどうするのよ」
バルズウェルト家は、軍で常に重要な位置についてきた家柄であるためか
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