第17章 覚醒
夕暮れの放課後は、いつもと違う緊張感に満ちていた。
訓練に使用される闘技場には、対照的な2人の姿。
「ようやく・・・ようやくこの時が来ましたわっ!」
「う~ん・・・何だかなぁ~・・・」
勝負を愉しみにしていたのだろう、レイナは興奮気味だ。
対してアリスは、未だにいまいち乗り気ではないように見える。
「さて、互いに準備はよろしいですか?」
2人が戦うことは、既に学園全体にまで広がっていた。
まあ閉鎖的な場所であるほど、噂というものは広がりやすいため
仕方がないと言える。
そのため観戦者が殺到しかねないと判断し
前もって学園長に話を通して全てを立ち入り禁止にしておいた訳だが。
ちなみにセレナは、アリスをここまで連れてきた後
『私、これからどうしても実家に帰らなきゃダメなのよ』と言って
さっさと帰って行った。
なのでこの場には、私と勝負をする2人のみ。
「―――乙女を守護する聖獣の加護を」
「―――契約を果たせ、暁の剣『フォルナ』よ」
互いに武器を出す。
聞いていた通り、レイナの武器は突撃槍だ。
正直、少女の腕力で振り回せるものではないものだが
これをどう使うのかという興味もある。
「ネックレスの発動、急所部への寸止め、意識を失う。
以上の場合のみ決着とします。
それ以外は基本的に止めませんので双方、全力で悔いの無いように」
左手を上にあげると、2人は距離を取る。
数秒の静寂の後―――
「では、はじめっ!」
声と共に、あげていた手を下に振り下ろして開始の合図をする。
第17章 覚醒
しかし2人は構えたまま動かない。
だが少しして、レイナが痺れを切らしたのか
槍の穂先を前に出し、突撃するような姿勢でアリスに突っ込んでいく。
「はぁっ!」
気合の入った声と共に突き出された槍を
アリスは、穂先に剣を当て方向を逸らして回避する。
今の一撃を避けると踏んでいたのか、レイナは体勢を崩すことなく
横に跳躍しながら槍を引き戻す。
槍という武器は、リーチが長く相手を寄せ付けない便利な武器なのだが
間合いを詰められた時や、槍を引き戻す際は、非常に隙が大きい武器でもある。
今のは、槍を引き戻している間に距離を詰められそうなタイミングだったため
横に跳躍するという距離を取る行為と、その行動で相手を警戒させ追撃をしにくくし
更に隙となる槍を引き戻す動作を入れることで、隙を完全に潰した。
初手からの綺麗な流れに、彼女の努力と意気込みが見える。
着地したレイナは、着地の際に曲げた膝のバネを利用して
またもアリスに向かって突っ込む。
だが今度は、槍の距離を保ちながら槍を連続で突き出す。
しかし、これもアリスは冷静に回避する。
何度目かの突きを引き戻した時、一歩大きく踏み込んだレイナが
槍を上に振りかぶって叩きつけてくる。
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