王の在り方
月明かりの照らす中庭に、白く怪異な異物が浮かぶ。
一つ、また一つと、闇の中に花開くかのように出現する蒼白の貌。冷たく乾いた骨の色。
髑髏の仮面だった。さらにその体躯は漆黒のローブに包まれていた。そんな異装の集団が続々と集結し、中庭にいた俺達を包囲していた。
アサシン。
その健在を知っていたのは、俺とタマモの二名のみ。
マスターが協力体制であったギルガメッシュはともかくとして、この複数のアサシンの出現には誰もが驚いていた。
初日に遠坂邸で倒された一体限りではなく、今回の聖杯戦争には複数のアサシンが紛れ込んでいるという怪異な現実。だが、それにしても、この数は異常というほかない。全員が揃いの仮面とローブを纏いながらも、体格の個体差は多種多様である。巨漢あり、痩身あり、子供のような矮躯もあれば女の艶かしい輪郭もある。
どういうつもりだ?なんでここにアサシンが来た?
先程勢いに任せて、遠坂の悲願である『根源への到達』とその方法をギルガメッシュへと話した。そして、それ故に時臣の命運は風前の灯火となったわけだ。
だというのに、この状況でのアサシン投入。
まさしく原作通りとなってしまっている現状はギルガメッシュへの敵対行為と取られてもなんらおかしくなく、これでは時臣の死は確定したようなものだ。
これが綺礼の独断である可能性はほぼない。何の目的も願いも持たない綺礼が、時臣を勝たせる為に参加した綺礼が時臣を死なせるためにこんな事をするはずがない。
そうなるとやはり時臣の差し金か?
そう思わずにはいられなかった。
「時臣め……余計な真似を」
かくいうギルガメッシュも怒気を見せるどころか、呆れ返った視線でアサシン達を見ていた。あの様子だと、時臣を殺す事すら、最早ただの徒労と断じそうだ。
どういう心情かは知らないが、英雄王は殺る気なくなったっぽいぞ、よかったな、時臣。
セイバーはアイリスフィールを庇うように不可視の剣を構えるが、その表情は強張っている。
セイバーが一人だけなら、遅れをとることはないし、例え左手が使えなくても、負ける事はまずない。
だが、アイリスフィールを庇ってともなると、それはかなり困難だ。
総勢にして約八十体。それらをセイバー一人で斬り伏せる事は不可能であるし、それはライダーもまた同様だ。
唯一、例外があるとすれば俺ぐらいのものだが………その必要もないだろう。
「……一応聞くが、英雄王。これは時臣の計らいか?」
「さてな。有象無象の雑種の考える事など、いちいち知った事ではない。ましてや、あの男に、最早俺の臣下たる資格はない」
心底興味のなさそうにギルガメッシュは答えた。本人の言う通り、最早時臣に興味は微塵もなくなったんだろう。この調子だとおそらく、手違いがあったのだろう。何せ遠坂は『うっかり』でやらかす一族だ。おおかた、原作同様に綺礼に任せた直後くらいに俺が暴露したから取り返しがつかないことになったんだろう………あれ、これはうっかりじゃないか。俺のせいだな。予想の斜め上を行った。
「む……無茶苦茶だっ!」
続々と現れる敵影の数に圧倒されたウェイバーが、悲鳴に近い声で嘆く。まぁ、反則的であるか。
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