第15話 ウィズは経験豊富
カズマ少年とめぐみん、更に複数の冒険者からアクセルの周囲に魔物や動物が戻りつつあると知らされたアクセルのギルドは事態の究明のためにすぐさま廃城への調査を派遣する運びになった。
あなたももしものときのための戦力としてギルドから指名を受けて廃城に足を運んだわけだが、勿論廃城に魔王軍の幹部がいるはずが無い。
なぜならば件の魔王軍幹部、ベルディアは来る終末デスマーチに備えてあなたの家にあるシェルターの中で濁った瞳のままあなたと組み手などの自己鍛錬を行っているのだから。
廃城は全ての階の床の一部が崩落していたものの、死体や血痕といった戦闘の痕跡は全く残っておらずに調査チームの首を傾げさせる結果に終わった。
調査後も厳戒態勢は続いたが、一週間何も起きなかったことでそれも解除。
冒険者達も通常通りに依頼を受注できるようになって生活に困ることは無くなった。
後のことは王都からの本格的な調査班待ちということで完全に魔王軍の幹部騒ぎが終わったわけではないが、こうして一先ずアクセルの街は平穏を取り戻したのだ。
「俺は全然平穏じゃないけどな」
いつも通り組み手であなたに半殺しにされたベルディアがぼやいた。
「というかご主人。俺はそろそろウィズの店に挨拶に行きたいぞ。同じ街に住む元同僚として挨拶は当然だろう?」
どこかウキウキしながらベルディアがそんなことを要求してきた。
確かにモンスターボールを使えばベルディアも外に出られる。
だが今のベルディアはウィズから出禁を食らっている身だ。連れていくわけにはいかない。
「えっ、俺出禁なの!? 初耳なんだけどどうしてそうなった!?」
ベルディアはウィズの体やペットにとても興味があるようだと告げ口したらそうなっただけだ。
何でも身の危険を感じたらしい。当然の結果である。
「びっくりするほど致命的!! なんで本人に言っちゃうの!? ご主人には血も涙も無いのか!?」
流石にベルディアの自業自得ではないだろうか。
首をわざと転がしてスカートを覗く輩への対応としてはだいぶ優しいものだと思うのだが。
「…………バレてたのか」
ベルディアは真っ白になっていた。
ちなみにあなたは自分の目の前でそんな真似をしたら容赦なく愛剣で切り刻むつもりである。
「ご主人がウィズのことを好き過ぎる件について」
確かにウィズは大事に思っているがそれ以上にペットの不始末は主人の不始末なのだ。
ペットが街に放火しようものならそれはあなたの責任になってしまう。
火炎瓶を投擲して街を火の海にするお嬢様にはあなたも大層手を焼かされたものだ。
「ご主人と会話してると頭がおかしくなってきそうだ……」
頭を抱えるベルディアは今日もとても元気だ。
はやくまともな育成を開始してやりたいが、王都まで行ってもあなたの要求を満たす装備は無かった。
あるにはあったが一式を揃えようとすると今のあなたではとても手が届かない額である。
ベルディアのような大物賞金首を複数狩る必要が出てくるだろう。
さて、この世界で売っている装備品は基本的にノースティリスと比較すると一定の質が保証されている。
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