止まない雨
何でこんなにも、人を信用することが出来ないのだろう。自分のことながらこの考えが嫌になる。
四糸乃のそんなことを考えながらだんだん元気のなくなっていく顔を見てか、京乃は不安げな顔をして口を開く。
「四糸乃ちゃん、大丈夫? ……えーと、あ、そうだ。家にちょうどいいお菓子あるし、それ食べたら気が落ち着くかも」
元気のない四糸乃を元気づける為か、京乃は思い出したように口に出した。そんな京乃の様子をみて、四糸乃は首をふる。
「……いえ、そんな……悪いです……」
「ううん、遠慮なんかしなくていいよ? どうせ私だけじゃ消費しきれないだろうし」
よしと意気込んで、京乃は四糸乃の手を握り扉の鍵を開けた。玄関で靴を脱ぎ、リビングにある椅子に四糸乃を座らせた京乃は、準備するから待っててと1人と1匹に伝えて、どこかに行ってしまった。
その間、暇になってしまった四糸乃たちは部屋を見渡しながら会話をする。
「よしのん、本当に大丈夫かな……?」
『京乃ちゃんのこと? 大丈夫だよー
京乃ちゃんからは、あの人たちみたいなものは感じなかったしねー
四糸乃の気持ちも分かるけど、京乃ちゃんのことは信じてみようよっ!』
「……」
よしのんの言葉に対して、四糸乃は何も返せなかった。
本当は、京乃を信じたい。
疑いたくなんてない。京乃はきっといい人、なのだ。
だけどもし、それが間違っていたとしたらどうすればいいのだろう。それを信用して勝手に裏切られたとき、私は立ち直れるのだろうか?
……分からないと、四糸乃は俯く。
それを見かねたよしのんが声をかけようとしたとき、京乃が帰ってきた。
「四糸乃ちゃん、よしのん。雨で濡れたよね?」
そう言って京乃は持ってきたお菓子と飲み物を机に置き、タオルで四糸乃の髪とよしのんを拭いた。そして京乃が一通り拭き終えた後、四糸乃は感謝の言葉を告げて、何かを決心したような顔で口を開いた。
「あっ……あの、京乃……さん」
「どうしたの、四糸乃ちゃん?」
そう首を傾げながら問うてくる京乃の声音も顔も、初めて見た時よりも優しげで、こちらを気遣ってくれていて、四糸乃はこれからいうことに躊躇いを持ってしまった。
しかし聞かないと何も始まらないと思い、四糸乃は恐る恐る口を開いた。
「京乃さん……は、ど……して、私……に優しく……して、くれる……ですか……?」
四糸乃の言葉を聞いた京乃は優しげな顔を崩して、小さく息を吐いた。
「……どうして、なんだろうね?
私にもよく分からないんだ。ただ不安そうな四糸乃ちゃんを見た瞬間、何とかしないと思ったんだ。……私ってこんな柄じゃなかったはずなんだけどなぁ」
その言葉を聞きながら、四糸乃は京乃の顔を見た。
そこには打算はなく、ただただ優しさがあるだけだった。
……信じても良いのだろうか。そんなことを思いながら、開くつもりはなかった口を開いてしまった。
「……あなたは……私を、嫌いじゃない……ですか……? 皆さん、私が嫌いで……、だから痛い、攻撃を……してきて……」
なのに、どうして京乃は攻撃してこないのか。
四糸乃にとって無償の好意なんてものは怖いものでしかない。
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