006:それぞれの動きと死亡フラグ
俺は、ループが起こったのはこの数年の間の話だと思っていた。
卒業式や入学式が消え、ただの始業式、終業式となったあの日から、この終わらない一年が始まったのだ、と。
だが、今ここにきて、その考えを改めざるを得なくなっていた。きっと、もっと前にループはあったのではないかと。なにせ――
中学最後の一年を含めたとしても2.3年の間にあの男が解いた事件の資料が膨大な量となって目の前に現れているのだから。
え、たった2・3年でお前こんなに事件関わってたの? は? これ死人が出てる奴だけ? じゃあ出てないのは? あ、まだまだあるんですかそうですか。
「これをどうやって捌けと……」
読みが甘かった。俺はループが起こったのは奴が高校生になってから江戸川コナンになるまでの、およそ2年くらいの間の資料だと思っていた。確かに今こうやってアイツと関わって事件に巻き込まれているわけだが、黒川邸の事件からは少々時間が経っている。一月に多くて3件として、一年で36件。トータルで60件もないだろう。そこからあからさまに関係なさそうな物を抜けば、多くても30がせいぜいじゃないか。そう考えていた。
――なに、この山? あいつが高校生探偵の時もループ実は起こってたんじゃねーだろうな? どっちかが本編で、もう片方が外伝的な感じで。
「本当にこの量をひとりで捌くのかい?」
えぇ、正気の沙汰じゃありませんよね。いやマジで。
資料を運んできてくれたぽっちゃりした刑事――千葉さんが、何も言わずに缶コーヒーを差し入れてくれた。ヤバイ、涙出そう。
「えぇ、まぁ。探偵の期待に応えるのが助手の役目なんで」
出来るなら人手を借りたい所だが、さすがにそこまで図々しいお願いは出来ない。さっき聞いた情報だと、例の爆弾は位置こそまだ分かっていないが、環状線内の列車は全て他の路線に切り替え、無事に乗客を全員下ろす事が出来たそうだ。今は目暮警部が陣頭指揮をとって、残された爆弾を探しているらしい。
日没までまだまだ余裕はある。恐らく問題はないだろうが、当然今、署内の人手はかなり少ないだろう。
「まぁ、なにかあったら近くの人を呼んでくれよ。僕も目暮警部から言われている事があってね。そっちの調べ物をするから」
「えぇ、何から何まですみません」
「なぁに、事件に関係がある事なんだろう? 本当なら僕達警察がしっかりしなきゃいけないのに、君たちの様な若い探偵さんにこんな仕事を押しつけちゃう方が問題だよ」
じゃあ、頑張って。千葉さんはそう言いながら、軽く手を振って会議室から出て行った。
まじでいい人だなぁ……。
「さて。そんじゃこっちも始めるか」
調べるのは新しい方から。注目すべきは『アイツ』の名前が出ていないか、あるいはなんらかの『特別な建築物』などが事件を通して何か変化したか。
そう、多分犯人は―――あの糞野郎だ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「こうして見るとただの公園じゃのう」
「だよなぁ。公園じゃなくて、周りの方か?」
児童公園で車を止めてもらい、阿笠博士と共に児童公園の近隣に何か手掛かりはないかと調べているが、特に成果は出ていない。
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